新型インフルエンザに罹患して休業する従業員の給与の取扱い

 昨日以来、関西地方を中心に新型インフルエンザが急速に拡大し、学校が休校になるなどの影響が出ていますが、企業においても営業の一部停止や出張の自粛などの対応が始まっています。そこで本日は新型インフルエンザに罹患した、あるいは罹患したと思われる従業員を自宅待機(休業)させる場合の給与の取扱について解説しましょう。


 今回の新型インフルエンザを理由として従業員を自宅待機をさせる場合の給与の支払いについては、「罹患をした場合」「罹患が疑わしく医療機関への受診により休業する場合」「罹患が疑わしく自主的な判断で休業をさせる場合」を分けて考える必要があります。労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由によって従業員を休業させる場合には、平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければならないと定めていますが、この休業手当を支給しなければならない場合は、「罹患が疑わしく自主的な判断によって休業をさせる場合」のみに留まり、「罹患した場合」「罹患が疑わしく医療機関の受診により休業する場合」においては、休業手当の支給は必要ありません。これは平成15年に流行したSARS(重症性呼吸器症候群)についての愛知労働局から厚生労働省へ照会をした取扱いが参考になります。


新型インフルエンザに罹患して休業する従業員の給与の取扱い


 なお、図表における伝播確認地域は、新型インフルエンザの場合、平成21年5月19日現在ではメキシコ・アメリカ合衆国・カナダの3カ国のみとなっていますが、関西(大阪・神戸・芦屋)地区についても伝播確認地域として類推解釈をして運用をしてもよいでしょう。ただし、根拠なく疑いのみによって休業を命じる場合には、上記に該当し、休業手当の支払い義務が発生するため注意が必要です。


[関連法規]
労働基準法 第26条(休業手当)
 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。



関連blog記事
2009年5月19日「国内感染確認後の新型インフルエンザ対策」
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/50494343.html
2009年5月12日「新型インフルエンザ対策パンフレット」
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/50489898.html
2009年5月7日「海外派遣企業での新型インフルエンザ対策ガイドライン」
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/50487539.html
2009年5月1日「事業所・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン」
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/50485868.html


参考リンク
厚生労働省「新型インフルエンザ対策関連情報」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/


(服部英治


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