[ワンポイント講座]退職証明書を交付する際の留意点

 社員が退職する際に、退職証明書(様式のダウンロードはこちら)の交付を求められることがあります。今回のワンポイント講座では、その退職証明書を交付する際の留意点を取り上げてみましょう。


 退職時の証明については、労働基準法第22条第1項において、労働者が在職中の契約内容等について証明書の交付を請求したときは、使用者は遅滞なく、これを交付しなければならないと定められています。具体的に証明書に記載する事項については、使用期間、業務の種類、当該事業場における地位、賃金、退職事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む)とされており、社員が請求した事項のみ記載する必要があります。


 これらの項目の実際の記載内容については、関連する通達(平成11年1月29日 基発45号)が出されています。
使用期間
 その会社において職務や事業場の変更があっても会社が同一である限り通算して記載する。
業務の種類
 なるべく具体的に記入し、特に特殊技能を必要とするものについては、それが明確となるように記載する。業務の種類が使用期間中に変わった場合は、原則としてこれらをすべて記載する。社員の希望に従って、一部の特定業務について記載することも差し支えない。
当該事業場における地位
 単に職名、役付名等のみでなく、その責任の限度の明確にすべきとされる。
賃金
 賃金の名称ごとに記載し、1箇月の総額も記入すべきとされるが、この点も社員の希望に従って記載することが望ましいとされる。
退職事由
 自己都合退職、勧奨退職、解雇、定年退職等社員が身分を失った事由を示すこと。また、解雇の場合には、その理由も記載する。解雇の理由については、具体的に記載する必要があり、就業規則の一定の条項に該当することを理由として解雇した場合には、就業規則の内容および当該条項に該当するに至った事実関係を証明書に記入する。


 このように退職証明書については、以上の内容で作成することが求められますが、実務においては退職証明書を交付した後に、退職理由などについて退職者と会社の言い分が異なるということが少なからず見られます。この点についても通達(平成11年3月31日 基発169号)が出されており、「労働者と使用者との間で労働者の退職の事由について見解の相違がある場合、使用者が自らの見解を証明書に記載し労働者の請求に対し遅滞なく交付すれば、基本的には法第22条第1項違反とはならないものであるが、それが虚偽であった場合(使用者がいったん労働者に示した事由と異なる場合等)には、前記と同様法22条第1項の義務を果たしたことにはならない」とされています。そのため、もちろん虚偽の内容は問題ですが、退職者と見解の相違がある場合でも、まずは会社の意向に沿って退職事由を記載しておけば、会社としての交付義務を果たしたということになります。なお、退職証明書の請求については、労働基準法第115条により2年で時効となります(平成11年3月31日 基発第169号)。



関連blog記事
2006年12月22日「退職証明書」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/51126207.html


(福間みゆき)


当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。