保険料率変更・被保険者範囲拡大などが検討されている雇用保険法改正

保険料率変更・被保険者範囲拡大などが検討されている雇用保険法改正
 平成22年4月1日に施行された改正雇用保険法の内容は以下のページで取り上げていますのでこちらをご覧下さい。(H22.4.1 追記)

2010年4月1日「厚生労働省が発行する改正雇用保険法リーフレット ダウンロード開始!」
https://roumu.com
/archives/51716246.html

2010年3月31日「[速報]平成22年度の新雇用保険料率は一般の事業で1,000分の15.5」
https://roumu.com
/archives/51715591.html

——————————————————-
 先日、「第53回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会」が開催され、雇用保険制度の見直しの方向に関する資料が公開されました。この制度の見直しの背景は厳しい経済・雇用状況等があり、前回の改正でも行われた非正規労働者に対するセーフティーネットの機能の更なる強化を図ること、雇用調整助成金等により支出が大幅に増加した雇用保険二事業も含めた雇用保険全体の財政基盤の強化を図ることが緊急の課題と明記されています。この資料の見直しの方向として実務面に大きな影響がありそうな項目をいくつか抜粋してみましょう。


適用範囲について
(1)非正規労働者に対するセーフティーネットの強化
・離職しても受給資格を得られない層の発生は懸念されるものの、「週所定労働時間20時間以上、31日以上雇用見込み」の者については、雇用保険の適用対象とすべきである。
・被保険者資格の取得の手続について、事業主の事務負担が増加することを考慮し、被保険者資格取得届において必要とされている添付書類について、簡素化を図るべきである。

 

(2)雇用保険に未加入であった者への対応
・事業主が被保険者資格取得の届出を行わなかったことにより、雇用保険に未加入となっていた者については、現行制度においては、被保険者であったことが確認された日から2年前まで遡及して適用できることになっている。しかしながら、2年以上前の期間において事業主から雇用保険料を控除されていたことが給与明細等により明確に確認された場合については、事業主が届出を行わなかったことにより所定給付日数が短くなる不利益が労働者に生じないようにするため、2年を超えて遡及して適用できることとすべきである
・遡及適用が必要となるような未加入のケースの発生を防止することが重要であり、このため、事業主を通じて被保険者である労働者に雇用保険保険者証を交付することを確実に履行するとともに、労働者がこれを保有しているか自ら確認することを促すなど、雇用保険の適用手続について運用面での必要な改善を図るべきである。

財政運営について
(1)失業等給付に係る国庫負担について
 雇用保険の保険事故である失業については、政府の経済対策、雇用対策と関係が深く、政府もその責任を担うべきであり、失業等給付に係る国庫負担割合は、法律の本則である1/4とするのが本来である。国の厳しい財政状況を勘案すると、平成21年度において一般の財源を投入すること、及び、平成23年度から国庫負担を法律の本則である1/4に戻すことが明確にされたことでやむを得ないものと考えるが、これを確実に実現していくべきである。

(2)雇用保険二事業の安定的な運営の確保について
・雇用保険二事業の財政不足の解消にあたっては、暫定的な特例措置として、雇用調整助成金等のために必要な額について、失業等給付に係る積立金から借入れを行うことはやむを得ないものと考える。
・雇用保険二事業に積立金から借入れを行うのであれば、平成22年度の雇用保険二事業に係る保険料率については、特例的に弾力条項を発動しないこととし、3.5/1000とすることが適当である。

(3)平成22年度の失業等給付に係る雇用保険料率について
・平成21年度の保険料率は1年限りの特例措置として8/1000となっていたところであるが、平成22年度の失業等給付に係る保険料率については、厳しい雇用失業情勢が続くことが懸念される中で、失業等給付に係る収支の悪化は懸念されるものの、積立金の状況を勘案し、原則16/1000であるところ、弾力条項により12/1000に引き下げることとすべきである。

 これら以外に今後の課題も挙げられていますが、資料全体を見ると、非常に実務面にも配慮している内容が盛り込まれているように感じられます。ここ数年、雇用保険法は年度末になって改正法が成立するという状況が続いており、この資料にある雇用保険料率の変更がいつ決定されるのかも注目されるところです。


関連blog記事
2009年12月8日「[速報]新緊急経済対策における雇用対策の概要」
https://roumu.com
/archives/51664028.html

 

参考リンク
厚生労働省「第53回 労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会」
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/12/s1218-12.html

(宮武貴美)

当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。