政府の新成長戦略に見る人事労務分野の対策
政府は最年末の30日、2020年度までの平均で名目3%、実質2%を上回る成長を通じ、2020年の名目GDP650兆円(2009年度473兆円)を発表しました。今回の新成長戦略においては、戦略分野として以下の6つが掲げられています。
グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略
ライフ・イノベーションによる健康大国戦略
アジア経済戦略
観光立国・地域活性化戦略
科学・技術立国戦略
雇用・人材戦略
以下ではこの中から「雇用・人材戦略」の内容について取り上げましょう。
【2020 年までの目標】
以下の項目について、雇用戦略対話等を踏まえ具体的目標を定める。
『若者フリーター約半減』、『ニート減少』、『女性M 字カーブ解消』、『高齢者就労促進』、『障がい者就労促進』、『ジョブ・カード取得者300 万人』、『有給休暇取得促進』、『最低賃金引上げ』、『労働時間短縮』
【主な施策】
●若者・女性・高齢者・障がい者の就業率向上
●「トランポリン型社会」の構築
●ジョブ・カード制度の「日本版NVQ(職業能力評価制度)」への発展
●地域雇用創造と「ディーセント・ワーク」の実現
以下、この分野における具体的対策として明記されているものをピックアップします。
(1)若者・女性・高齢者・障がい者の就業率向上のための政策目標を設定し、そのために、就労阻害要因となっている制度・慣行の是正、保育サービスなど就労環境の整備等に2年間で集中的に取り組む。
(2)「第二セーフティネット」の整備(求職者支援制度の創設等)や雇用保険制度の機能強化に取り組む。
(3)非正規労働者を含めた、社会全体に通ずる職業能力開発・評価制度を構築するため、現在の「ジョブ・カード制度」を「日本版NVQ(National Vocational Qualification)」へと発展させていく。
※NVQ は、英国で20 年以上前から導入されている国民共通の職業能力評価制度。訓練や仕事の実績を客観的に評価し、再就職やキャリアアップにつなげる役割を果たしている。
(4)国民の新たな参加と活躍が期待される雇用の場の確保のために、雇用の「量的拡大」を図る。このため、成長分野を中心に、地域に根ざした雇用創造を推進する。
(5)「ディーセント・ワーク(人間らしい働きがいのある仕事)」の実現に向けて、「同一価値労働同一賃金」に向けた均等・均衡待遇の推進、給付付き税額控除の検討、最低賃金の引上げ、ワーク・ライフ・バランスの実現(年次有給休暇の取得促進、労働時間短縮、育児休業等の取得促進)に取り組む。
人事労務管理の実務家としては、(5)の同一価値同一労働の推進や年休の取得促進、時短、育休等の取得促進などのポイントについてどこまで具体的な法規制が出てくるのかが気になるところではないでしょうか。
参考リンク
首相官邸「「新成長戦略(基本方針)」について(平成21年12月30日閣議決定)」
http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2009/1230sinseichousenryaku.pdf
(大津章敬)
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