国民年金保険料を納付しない理由は「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」がトップに

 先日、厚生労働省から「平成20年国民年金被保険者実態調査」の結果(以下、「調査結果」という)が発表されました。この調査は、国民年金第1号被保険者(以下、「第1号被保険者」という)について、保険料の納付状況ごとに、その実態を明らかにし、被保険者の収入、被保険者の国民年金に対する意識、保険料未納の理由など今後の国民年金事業運営に必要な資料を得ることを目的として実施されたものです。この調査からは、第1号被保険者の年齢階層別の国民年金保険料納付状況等が分かるのですが、今回は、この調査のうち、「国民年金保険料を納付しない理由」について取り上げてみましょう。

 2010年3月23日のブログ記事「平成22年4月からの国民年金保険料は月額15,100円」で取り上げたとおり、国民年金保険料は平成29年まで毎年引上げられることが決定しており、平成21年度から平成22年度にかけては、月額440円という大きな引上げとなりました。調査結果のうち、国民年金保険料を納付しない理由の項目を見ると、「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」がもっともも高く、第1号被保険者の滞納者総数のうち、64.2%を占めています。これは、世帯の総所得金額階級別に国民年金保険料を納付しない理由を見ても、すべての所得金額階層でもっとも高い割合となっており、大きな負担感のある第1号被保険者が多いということがよく分かります。但し、世帯所得金額が1,000万円以上であっても38.9%がこの理由を示しているため、実態はより深刻な年金不振が進行していると見ることもできるでしょう。一方で、第1号被保険者の滞納者に、保険料を納付しないことについての意識を確認した調査では、「もう少し生活にゆとりができれば保険料を納めたい」と63.1%が回答しており、納付意識がないわけではないことが分かります。

 今後、年金制度改正の議論が積極的に行われていくことかと思いますが、少しでも国民が信頼して保険料を納めることができるようになることが期待されるところです。


関連blog記事
2010年3月23日「平成22年4月からの国民年金保険料は月額15,100円」
https://roumu.com
/archives/51708425.html

2010年2月3日「平成22年度の年金額も前年据え置き」
https://roumu.com
/archives/51690801.html

 

参考リンク
厚生労働省「平成20年国民年金被保険者実態調査」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/140-2.html

(宮武貴美)

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