日本経団連がまとめた中小企業の人材採用・定着・育成に向けた取り組みの具体事例

中小企業を支える人材の確保・定着・育成に関する報告書 大企業においては景気回復の兆しが見え始めていますが、多くの中小企業においてはまだまだその実感を持つことができる状況ではなく、厳しい状況が続いていますが、今後、中小企業の持続的な成長を実現していくためには、競争力の源泉である人材の確保・定着・育成が不可欠な要件として挙げられます。


 こうした状況を背景に先日、日本経団連が「中小企業を支える人材の確保・定着・育成に関する報告書」をまとめ、公開しました。そのアンケート調査によれば、人材の確保・定着・育成をめぐる現状と課題については、(1)人材が確保できない、(2)人材が定着しない、(3)効果的な人材育成に取り組めないという3点が指摘されています。これらの課題を解決するためには企業理念・価値観の明確化と共有や個々人の能力を育成・発揮できる職場環境の整備が求められますが、この報告書ではこれらに関する中小企業の取り組み事例がまとめられています。そのポイントは以下のようになりますが、具体的で参考になる資料ですので、参考とし、実際の改善に活用頂ければと思います。



企業理念・価値観の明確化と共有
□社長自らが講師となる早朝勉強会、朝礼などを定期的に開催し、企業理念を唱和させる。
□研修の場を通じて自社の行動指針を浸透させる。


個々人の能力を育成・発揮できる職場環境の整備
【能力開発を支援する環境の整備】
□業務をやりやすくするための活動として、環境整備活動(身の回りの整理整頓、床やトイレの清掃など)をすべての営業活動に優先して取り組んでいる。班を決めて分担表を作り、点検は社長が行い、さらに班の評価点を個人の賞与にも連動させている。
□入社から退社するまでの間、どのような資格を取得し、どのような教育訓練を受けたのかを個人別のカードに記録している。上司が各人のカードを見ながら各人が受講すべき研修について年初の段階で計画を策定し、それに沿って教育訓練を実施している。
□社会人経験3年以上の先輩社員を「里親」とし、2年目以上の社員を「里兄」「里姉」、新入社員を「里子」として「里家族」を形成し、仕事とプライベートの区別なく、新入社員の面倒をみる「里親制度」を導入している。
【やる気を引き出す仕組みづくり】
□全社員を対象として、社長以外のすべての役職に自ら立候補し、レポート提出などの試験に合格すればそのポストに就任できるよう、独自の昇進規定を導入している。
□給与査定、役職査定を3ヵ月毎に行っており、昇給・昇格のチャンスを多くしている。
□周囲の社員が評価する制度を導入し、一人の従業員に対して、上司、同僚、部下を問わず、6人の従業員を評価者として選び、会社の行動基準などに即して評価している。
□社員全員が仕事や個人の夢を語る「夢会議」を毎月1回、社員全員の出席のもとで開催し、夢を実現するために、今月何をすべきか、全員が知恵を出し合いながら議論している。
【コミュニケーションの活発化・円滑化】
□リフレッシュルームでのお菓子等の無償提供や、他部署とのランチ会や食事会を開催している。


 報告書のダウンロードは以下より行うことができます。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2010/064/index.html



参考リンク
日本経団連「中小企業を支える人材の確保・定着・育成に関する報告書」
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2010/064/index.html


(大津章敬)



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