[ワンポイント講座]労働基準法など今年改正された各法律の猶予措置の対象範囲

 今年は、4月の労働基準法に始まり、育児・介護休業法、障害者雇用促進法など様々な法律の改正が実施されましたが、中小企業への配慮から従業員規模などによって猶予措置が設定されることが多くなっています。そこで、今回のワンポイント講座では、これらの法令において従業員数がどのように定義されているのか確認し、適用猶予の有無を見直しておきましょう。



改正労働基準法の適用
 今回の改正労働基準法の目玉となった「月60時間を超える時間外に対する割増賃金率の引上げ」は、中小企業を対象に3年を目処に猶予されることになりました。そのため、自社が中小企業に該当するか否かを確認しておく必要があります。この中小企業の範囲については、「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する労働者の数」で判断されることになっており、例えばサービス業の場合、資本金5,000万円以下または常時使用する労働者数が100人以下のいずれかを満たす場合、中小企業に該当します。ここで問題となるのが、「常時使用する労働者」の範囲です。これについては、まず「労働者」の定義を確認しておく必要があります。この「労働者」とは、労働基準法第9条に定める労働者のことであり、職業の種類を問わず事業に使用される者で賃金を支払われる者を言い、日雇労働者やパート等も含まれます。そして、「常時使用する」については、企業の通常の状況により判断するとされており、臨時的に雇い入れた場合や臨時的に欠員を生じた場合は労働者の数に変動が生じたものとして取り扱う必要はありませんが、パート・アルバイトであっても臨時的な雇入れでなければ、常時使用する労働者数に含める必要があります。また、労働基準法は事業場単位で適用され、36協定や就業規則の届け出は事業場ごとに行う必要がありますが、上記の事項の適用については、企業単位で判断される点に注意が必要です。


改正育児・介護休業法の適用
 改正育児・介護休業法では「常時100人以下の労働者を雇用する事業主」については、所定外労働の免除、短時間勤務の措置義務等の適用が平成24年6月30日まで猶予されています。この「常時100人以下の労働者」とは、常態として100人以下の労働者を雇用している場合をいい、労働者の定義は上記の改正労働基準法の労働者と同様であり、臨時に労働者を雇い入れた場合や臨時的に欠員を生じた場合等は労働者の数が変動したものとして取り扱いませんが、日々労働者やパート等を常時雇用している場合には人数に含める必要があります。また、この適用も事業場単位ではなく、企業単位で判断することになっています。


改正障害者雇用促進法の適用
 障害者雇用納付金制度の適用は平成22年7月より常時雇用する労働者数が201人以上の企業となり、平成27年4月より101人以上の企業に拡大されることになっています。この「常時雇用する労働者」の定義については、上記の労働者の定義とは異なり、以下の(1)または(2)に該当する者がカウントの対象となる労働者となります。
(1)雇用(契約)期間の定めがなく雇用されている労働者
(2)一定の雇用(契約)期間を定めて雇用されている労働者であって、その雇用(契約)期間が反復更新され雇入れのときから1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる労働者又は過去1年を超える期間について引き続き雇用されている労働者
※1年を超えて引き続き雇用されると見込まれるか否かについては、類似する形態で雇用されている他の労働者が1年を超えて引き続き雇用されている等の実態にある場合には、雇用された日から1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者として取り扱う。
 また、常時雇用する労働者のうち「1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者」についても0.5人としてカウントされることに注意が必要で、この適用も企業単位となります。


 この他にも、労働安全衛生法のように事業場単位で常時雇用する労働者数に応じて衛生管理者や産業医の選任が義務づけられているものがあったり、助成金の中に雇用保険の被保険者数を要件としたものなどがあります。そのため、会社としては、法令の適用となる基準をしっかり確認した上で規程の整備等を行い、また、対象となる要件を押えた上で助成金を活用していくことが求められます。


[関連通達]
昭和47年9月18日 基発第602号
 本条で「常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する」とは、日雇労働者、パートタイマー等の臨時的労働者の数を含めて、常態として使用する労働者の数が本条各号に掲げる数以上であることをいうものであること。


平成21年12月28日 雇児発第1228号
2 定義
 イ「労働者」とは、労働基準法(昭和22年法律第49号)第9条に規定する「労働者」と同義であり、同居の親族のみを雇う事業に雇用される者及び家事使用人は除外するものであること


(福間みゆき)


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