[ワンポイント講座]知っておきたい健康保険の海外療養費制度

知っておきたい健康保険の海外療養費制度 近年、経済のグローバル化により従業員を海外赴任させる例が増えています。そこで本日のワンポイント講座では健康保険の「海外療養費」について取り上げてみましょう。


「海外療養費」とは
 「海外療養費」とは海外旅行、赴任中に病気やケガでやむを得ず現地の医療機関で診療を受けた場合、申請により一部医療費の払い戻しを受けることができる制度で、(1)一般的な海外旅行保険ではカバーされていない既往症や歯科治療も一定の条件下で給付対象になる、(2)民間の保険会社から保険金が給付された場合でも関係なく請求できるといった特徴があります。支給対象となるのは、日本国内で診療を受けた場合に健康保険の適用が受けられる治療に限られ、はじめから治療目的で海外へ渡航した場合は支給対象外となります。


支給金額
 日本国内の医療機関等で、同じ傷病を治療した場合にかかる治療費を基準に計算した額(実際に海外で支払った額の方が低いときはその額)から自己負担額相当額(患者負担分)を差し引いた額が支給されます。よって例えば日本で2万円で治療できるものが、その国では10万円かかるといった場合などには、海外で支払った医療費の総額から自己負担相当額を差し引いた額よりも、支給額が大幅に少なくなることがあるため注意が必要です。なお、外貨で支払われた医療費については、支給決定を行う日の外国為替換算率(売りレート)により円に換算し、支給額が計算されます。


申込手続き
 申し込みについては下記の(1)(3)(5)の書類は必ず必要になります。また、診療内容明細書については、歯科診療の場合は(4)が必要で、歯科以外の診療の場合は(2)様式Aが必要になります。(2)(3)(4)ともに、各月ごと、受診者ごと、医療機関ごと、入院・外来ごとに1枚ずつ証明が必要です。また、それぞれ別添の邦訳を添え、翻訳者の住所・氏名・連絡先を記載し、押印することとなります。なお、用紙については、協会けんぽのホームページからダウンロードすることができますし、協会けんぽに請求することもできます。
(1)療養費支給申請書
(2)診療内容明細書(様式A)  ※健康保険用国際疾病分類番号をご証明いただく際は、別添の 国際疾病分類表を参照のこと
(3)領収明細書(様式B)
(4)歯科診療内容明細書(様式C)
(5)領収書(現地でお支払いいただいた領収書の原本)
※保険給付費の適正な処理のため、「パスポートの写し」等の提出を求められる場合があります。


[海外から申請するときの注意]
 海外から直接送金および通知書を送付することはできませんので、申請書には日本国内の住所・金融機関口座を記入し、事業主または日本に在住の家族を経由して申請することとなります。また、申請書の受取代理人欄を記入することにより、本人以外の方に受取を委任することも可能です。


申請期限
 海外で医療費の支払いをした日の翌日から数えて2年を経過すると、時効により申請ができなくなりますので注意が必要です。


 わが国では、国民皆医療保険制度が採用されているため、基本的には旅行や留学、赴任で海外に出かけるすべての方がこの制度の適用を受けることになるでしょう。あまり知られていない制度ではありますが、海外旅行保険の付加的な保険として知っておきたいところです。



参考リンク
全国健康保険協会 愛知県支部「海外療養費について」
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/13,54413,94,151.html


(中島敏雄)


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