労政審雇用保険部会において検討が進められる「求職者支援制度」
2011年1月11日に開催された、労働政策審議会 職業安定分科会 雇用保険部会において、現在緊急の時限措置として行われている「緊急人材育成支援事業」を恒久制度である「求職者支援制度」として創設するための検討が行われました。本日はその資料の中から、この制度の給付の内容について取り上げてみましょう。
「求職者支援制度」は、雇用保険を受給することができない求職者に対するセーフティネットとして、求職者の就職に必要な基礎的および実践的な職業能力を高めるための訓練を受講する機会を確保するとともに、一定の要件を満たす場合にはその訓練期間中の生活を支援するための給付を支給し、あわせてハローワークが中心となって決め細やかな就職支援を行うことにより、求職者の早期の就職を支援する制度として位置づけられています。その給付金額については、現行の緊急人材育成支援事業において一律月10万円(世帯の場合12万円)の給付がなされていることとの継続性を考慮し、月10万円とすべきとしています。また、世帯で一定の収入や資産があればその生活を支援する給付を支給する必要性は低いことから、一定の収入がないこと及び資産が一定の水準を超えないことを要件とすべきとしています。具体的な収入については支給対象の月の収入が8万円(世帯25万円)以下であること、資産については、預貯金が300万円以下であることとされています。現在の緊急人材育成支援事業では金融資産が800万円以下であることとされていますが、現段階の案では「預貯金以外の金融資産や不動産については「時価評価が実務上難しいこと」「生活費への活用の面で流動性が高くないこと」「預貯金以外の金融資産や不動産を有している場合は、通常、預貯金も一定程度有していると想定されること」から、要件としないこととする」としている点は様々な議論がなされることでしょう。
この求職者支援制度について、厚生労働省は今月末に開催される通常国会に提出し、2011年10月からの恒久化を目指すとしています。財源は2分の1が国庫負担、残り2分の1が雇用保険料とされていますが、失業率悪化の原因の多くが能力のミスマッチにあると言われておりますので、こうした制度が活用され、少しでもミスマッチが改善されることが期待されます。
参考リンク
厚生労働省「第72回 労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会資料」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000103fd.html
厚生労働省「緊急人材育成・就職支援基金」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/nouryoku/training/index.html
(中島敏雄)
当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。
当ブログの記事の無断転載を固く禁じます。