[ワンポイント講座]応募時に提出された履歴書を取り扱う際の注意点

応募時に提出された履歴書を取り扱う際の注意点 震災の影響から、大手を中心に中断していた2012年春入社の採用選考も再開し、いよいよ採用活動も佳境に入っていますが、個人情報保護法の施行以来、応募者の履歴書の管理について、従来以上に細心の注意が求められるようになっています。そこで今回のワンポイント講座では、求職者の履歴書を取扱う際の注意点について解説しましょう。

 個人情報保護法においては、個人情報取扱業者は個人情報取得時において以下のような点に注意することが求められています。

  1. 個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知または公表しなければならない。
  2. 本人から直接書面等に記載された本人の個人情報を取得する場合は、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならない。ただし、人の生命、身体または財産の保護のために緊急に必要がある場合を除く。

 この個人情報取扱業者とは、個人情報データベース等を事業の用に供している者(国の機関、地方公共団体、取り扱う個人情報の量および利用方法からみて個人の権利利益を害するおそれが少ないと判断される者等を除く)のことをいい、一般の人や取り扱う個人情報の件数が5,000未満の事業者については適用されないことになっています。

 それでは、企業において履歴書を取り扱う際にどのような点に注意が必要なのでしょうか。上記で述べたとおり、企業は直接的に個人情報取扱業者とはなることは少ないと考えられますが、職業安定法第5条の4では、その業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集し、併せてその収集の目的の範囲内でこれを保管、使用しなければならないと定められています。また「職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集受託者、労働者供給事業者等が均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取り扱い、職業紹介事業者の責務、募集内容の的確な表示等に関して適切に対処するための指針」(平成11年労働省告示第141号)の中でも、労働者の募集を行う者はその業務の目的の範囲内で求職者等の個人情報を収集することになっており、その収集の際には、以下の3点について個人情報を収集することが禁止されています。

  1. 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となる恐れのある事項
  2. 思想及び信条
  3. 労働組合への加入状況

 結論として、企業は求職者の個人情報を取り扱う際、その利用目的の範囲内で収集、保管、使用しなければなりませんが、選考が終わりその個人情報を利用する目的がなくなれば、速やかに応募者に返送するか、破棄することが求められます。企業に対して履歴書の返却義務や保管義務は課せられていませんが、実務上において、不採用となったが履歴書が返却されないといったトラブルが多いことから、企業としては履歴書を提出させる際に返却を行うか否かをあらかじめ明示しておくことが望まれます。

[関連法令]
職業安定法 第5条の4(求職者等の個人情報の取扱い
 公共職業安定所等は、それぞれ、その業務に関し、求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者の個人情報(以下この条において「求職者等の個人情報」という。)を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。
2  公共職業安定所等は、求職者等の個人情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならない。

「職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集受託者、労働者供給事業者等が均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取り扱い、職業紹介事業者の責務、募集内容の的確な表示等に関して適切に対処するための指針」(平成11年労働省告示第141号)
第4 法第5条の4に関する事項(休職者等の個人情報の取扱い)
1 個人情報の収集、保管および使用
(1)職業紹介事業者は、その業務の目的の範囲内で求職者等の個人情報(1及び2において単に「個人情報」という。)を収集することとし、次に掲げる個人情報を収集してはならないこと。ただし、特別な職業上の必要が存在することその他業務の目的の達成に不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合はこの限りではないこと。
 イ 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となる恐れのある事項
 ロ 思想及び信条
 ハ 労働組合への加入状況
(2)(3)省略
(4)個人情報の保管又は使用は、収集目的の範囲に限られること。ただし、他の保管若しくは使用の目的を示して本人の同意を得た場合又は他の法律に定める場合はこの限りではないこと。


参考リンク
「職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集受託者、労働者供給事業者等が均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取り扱い、職業紹介事業者の責務、募集内容の的確な表示等に関して適切に対処するための指針」(平成11年労働省告示第141号)
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/haken4/dl/1b.pdf
厚生労働省「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針について」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/07/tp0701-1.html

(福間みゆき)

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