中国人事管理の先を読む!第23回「進出企業の人事制度(16)労務工の評価」
製造工場の人事考課制度で、労務工(ワーカー)に対してどのような評価を実施するかが課題となることがあります。労務工の評価について、いくつかポイントを挙げて説明します。
[労務工の評価期間]
企業では、半年あるいは1年に1回のペースで評価を実施するケースが多いですが、労務工に対する評価期間で半年、1年は長すぎてしまい、効果的な評価を実施することが難しくなります。可能であれば毎月評価を行い、評価結果に応じて「月奨金」を支給する方法が望ましいでしょう。毎月の評価を半年、1年集計し、年度の賞与や昇給に結び付けていく方法です。
[労務工の評価内容]
労務工を毎月評価する場合、何を評価するかについては2通りの方法があります。
生産量、歩留まり率等による「定量評価」
もっとも客観的に評価できるのがこの「定量評価」です。平日残業や休日出勤が多く、残業手当も膨れ上がっている企業では、定量評価を実施することで、労務工が必要な残業なのか、残業手当を多くもらうためにダラダラ作業をしている残業なのかが分析でき、結果的に生産性向上に直結させることができます。
日常の勤務態度による「定性評価」
上記のように労務工個々の生産量、歩留まり率が集計できるような業態ではこのような評価も可能ですが、複数人でひとつの作業を行う場合では個々の数値が量れないケースもあります。そのような作業特性の場合には「定性評価」を実施します。定性評価には「態度評価」「能力評価」の2つが挙げられますが、労務工に対しては勤務態度を中心とした評価を行うべきです。「班長の指示命令に従っているか」「作業場所の整理整頓ができているか」「作業手順を守っているか」等が態度評価の評価項目となります。
[労務工の評価者]
労務工の評価は、一次的には班長が行うことになりますが、毎月評価を行えばその分、班長の負担も多くなります。また労務工に悪い評価をつけたがらない班長もいますので、その点、会社や管理者は班長に対する十分な評価教育が必要です。評価内容はあまり項目が多く、内容が複雑ですと班長が評価できなくなり、長続きしません。できる限り簡素化した方がよいでしょう。
二次評価は班長の上司が担当することになりますが、通常は常に作業現場で労務工と接している班長の評価を優先し、2人の評価者間でウエイトを設けて、班長の評価のウエイトを若干高めに設定し、評価を尊重する方法が採られます。
[執筆者プロフィール]
清原学
株式会社名南経営 人事労務コンサルティング事業部
海外人事労務チーム シニアコンサルタント(中国担当)
1961年兵庫県生。学習院大学経営学科卒。共同通信社、アメリカAT&Tにて勤務後、財団法人社会経済生産性本部にて組織人事コンサルティングに従事。大手エンジニアリング企業の取締役最高人事責任者(CHO)を歴任し、上海・大連・無錫・ホーチミン・香港の駐在を経て、2004年プレシード上海設立。中国進出日系企業約400社の組織構築、人事制度設計、労務アドバイザリー、人材育成に携わる。日本、中国にて講演多数。2011年からは株式会社名南経営にて日本国内での活動を行っている。
・独立行政法人 中小企業基盤整備機構 国際化支援アドバイザー
・ジェトロ上海センター 人事労務委託業務契約
・財団法人 社会経済生産性本部コンサルティング部 経営コンサルタント
・兵庫県中国ビジネスアドバイザー
・神戸学院大学 東アジア産業経済センター アドバイザー
参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
http://bizpresso.net/about
(清原学)
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