中国人事管理の先を読む!第24回「進出企業の人事制度(17)崗位工資」

中国人事管理の先を読む! 自社の賃金がライバル企業の賃金や業界、地域相場と比較してどの程度の水準にあるのか、どの企業でも非常に気になるところかと思います。また、賃金の水準設定に関しては、自社の特定の職務賃金が他社や市場の相場に比べ適正かを考慮しなければなりません。これを十分に検討し、賃金制度として反映させ運用しなければ、社内からの人材の流出をもたらし、給与が合わないため相応しい技能を持った人材が確保・採用できない結果を招いてしまいます。

 日本と中国の賃金制度をみてみますと、日本では「職能資格制度」という社員の能力に基づいて等級が決定し、等級によって賃金が決定する仕組みですが、中国では「職務給」という社員個々の職務、つまりどのような仕事を担当しているかで給与が決定する仕組みです。組織内における職務別の価値を計り、それぞれの賃金に格差をつけています。以下の例のように、各職務を組織全体の等級位置にプロットし、そのポジションでの給与を決定する方法があります。

(例)全体を1―10級の等級で区分。各職務で等級に差をつけ、これにより職務で基本給自体に差をつける。

・開発担当社員—4―6級
・業務担当社員—2―4級 など

 また、資格要件が同じ社員であれば等級や基本給は同じにし、担当する仕事に応じ差をつけていく方法があり、後者は中国では崗位という独特な考え方で運用されています。以下が崗位の考え方です。

・開発担当社員(経験1年)—1級
・業務担当社員(経験1年)—1級
・崗位工資 開発1級の崗位—100元
       業務1級の崗位—なし

 全職務を1―10級の等級で区分した上、各技能者の希少性、代替性、必要経験年数等、職務の付加価値を「崗位工資」という給与項目で表し、基本給との併用により給与に弾力性をつけます。

 自社の給与水準に対して世間相場を考慮する場合、基本給で運用していてはベースアップに柔軟に対応できず、結果的に給与全体の底上げとなってしまいます。この点、崗位工資なら、特定の職務を担当している社員に対してのみ給与の相場感を吸収でき、相場の上昇に応じて運用できるメリットがあります。特に労務工などは給与総額の比較による競争力が重視され、技能習熟の要求、汎用性が高い職務であるため、常に流出が危惧されます。崗位工資を設けることで、報酬制度から見た自社の競争力を高められます。

[執筆者プロフィール]
清原学清原学
株式会社名南経営 人事労務コンサルティング事業部
海外人事労務チーム シニアコンサルタント(中国担当)
 1961年兵庫県生。学習院大学経営学科卒。共同通信社、アメリカAT&Tにて勤務後、財団法人社会経済生産性本部にて組織人事コンサルティングに従事。大手エンジニアリング企業の取締役最高人事責任者(CHO)を歴任し、上海・大連・無錫・ホーチミン・香港の駐在を経て、2004年プレシード上海設立。中国進出日系企業約400社の組織構築、人事制度設計、労務アドバイザリー、人材育成に携わる。日本、中国にて講演多数。2011年からは株式会社名南経営にて日本国内での活動を行っている。
・独立行政法人 中小企業基盤整備機構 国際化支援アドバイザー
・ジェトロ上海センター 人事労務委託業務契約
・財団法人 社会経済生産性本部コンサルティング部 経営コンサルタント
・兵庫県中国ビジネスアドバイザー
・神戸学院大学 東アジア産業経済センター アドバイザー

参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
http://bizpresso.net/about


(清原学)

当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。

当ブログの記事の無断転載を固く禁じます。