中国人事管理の先を読む!第25回「進出企業の人事制度(18)管理職の処遇」

中国人事管理の先を読む! 日系企業で勤務する従業員が描く賃金カーブについて、以前から気になっていることがあります。それは、相対的に見て管理職の賃金が低い企業が非常に多く見受けられる点です。欧米系企業あるいは最近の中国企業と比較すると、この傾向は顕著に現れています。

 日系企業の場合、学卒者や一般従業員の賃金水準は他国企業に引けを取らないのですが、従業員が管理職に昇格した場合をみると、他国企業のように賃金報酬が大きく跳ね上がるようなことはありません。日系企業の賃金カーブは下から連続的で、非常になだらかなケースが極めて多いということです。この状況を分析せずに放っておくと、重要な役割を担っている管理職の流出は防げなくなってしまいます。

 さらに、日本国内でもそうですが、一般的に管理職になると残業手当の支給が免除となるため、総収入がダウンすることがあります。日本であれば、ある程度収入がダウンしても、管理職になったというインセンティブによって感情的には容認されます。しかし、中国では収入が下がれば、管理職のモチベーションに大きな影響を与えることになります。

 このようなことから、日系企業は管理職に対し、もっと大胆な報酬制度を構築するべきでしょう。とはいえ、基本給を大きく上げてしまうと賃金テーブル全体のバランスが悪くなることや、定率で昇給させる場合に運用がしにくくなってしまいます。できれば職務手当(役職手当)で工夫をしたいものです。

 前述のように、管理職には残業手当の支給がなくなってしまうことも考えられるため、以下の表のように、それを補えるくらいの金額で職務手当を検討してみてはいかがでしょう。

[職務手当の一例]
職務 職務手当(元)
総監  8,000
部長  5,000
副部長 3,000
課長  2,000

 職務手当を大きくし、例えば賞与の算定基礎を「基本給と職務手当の合計」とすれば、業績に応じて大きく賞与を支給することも可能になってきます。年収で管理職の処遇を考えた場合、そこから生み出すインセンティブ効果は非常に大きなものとなるはずです。また、管理職によってマネジメントを担当する組織の大小がありますので、担当組織に応じて職務手当を変える工夫も必要です。さもなければ、大きな組織を受け持つ管理職に不満を生じさせてしまうことになりかねません。この点も注意が必要です。

[執筆者プロフィール]
清原学清原学
株式会社名南経営 人事労務コンサルティング事業部
海外人事労務チーム シニアコンサルタント(中国担当)
 1961年兵庫県生。学習院大学経営学科卒。共同通信社、アメリカAT&Tにて勤務後、財団法人社会経済生産性本部にて組織人事コンサルティングに従事。大手エンジニアリング企業の取締役最高人事責任者(CHO)を歴任し、上海・大連・無錫・ホーチミン・香港の駐在を経て、2004年プレシード上海設立。中国進出日系企業約400社の組織構築、人事制度設計、労務アドバイザリー、人材育成に携わる。日本、中国にて講演多数。2011年からは株式会社名南経営にて日本国内での活動を行っている。
・独立行政法人 中小企業基盤整備機構 国際化支援アドバイザー
・ジェトロ上海センター 人事労務委託業務契約
・財団法人 社会経済生産性本部コンサルティング部 経営コンサルタント
・兵庫県中国ビジネスアドバイザー
・神戸学院大学 東アジア産業経済センター アドバイザー

参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
http://bizpresso.net/about


(清原学)

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