労政審報告案で示された雇用保険制度見直しの方向性

労政審報告案で示された雇用保険制度見直しの方向性 先日、厚生労働省で第82回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会が開催され、そこで議論された「雇用保険部会報告(素案)」が公開されました。この報告では雇用保険制度の現状を踏まえた上で、今後の雇用保険制度の見直しの方向性が示されています。本日はその中から、実務への影響が大きいものを抜粋して取り上げます。


 高年齢雇用継続給付
 高年齢雇用継続給付については、平成19年1月9日の雇用保険部会報告において「原則として平成24年度までの措置」とすべきとされていましたが、平成21年12月28日の雇用保険部会報告においては「60歳代前半層の雇用の状況を踏まえ、平成25年度以降のあり方を改めて検討すべき」とされています。今回の報告素案では、現在の高齢者雇用の状況を踏まえ、雇用と年金の接続に資する観点も考慮し、高年齢者雇用継続給付は当面の間存置し、今後の高齢者雇用の動向に注視しつつ、そのあり方について改めて再検証すべきとされました。

 このように制度継続の方向が打ち出されたことで、当面はこの制度を活用した高齢者の報酬設計が継続できる見込みが強くなりました。

平成24年度の失業等給付に係る雇用保険料率
 基本となる失業等給付に係る雇用保険料率は、平成23年の法律改正により、平成24年度以降1000分の14(平成23年度は弾力条項により1000分の12)に引き下げられていますが、平成24年度については、失業等給付の収支の見通しや積立金の状況を勘案し、弾力条項に基づく下限の1000分の10に引き下げられる方向とされています。

雇用調整助成金の助成率等の引き下げ
 雇用調整助成金については、平成20年度以降、支給要件の緩和や助成率の引上げ等を行ってきたが、今後は経済・雇用情勢を慎重に判断しながら、原則として平成20年度後半以前の状態に段階的に戻していくことを目指すべきとされています。

基本手当の水準(給付率、給付日数)
 基本手当の水準(給付率、給付日数)については、現在の積立金残高や失業等給付の支給状況を考慮し、雇用のセイフティネットを拡充する観点から、雇用保険料率の引き下げと併せて、給付面での充実を図るべきという意見と、経済の不透明感等を考慮し、慎重に考えていくべきという意見があります。よってこの点については、引き続き検討すべきであるとされています。

マルチジョブホルダー、65歳以上への対処および教育訓練給付
 マルチジョブホルダー、65歳以上への対処および教育訓練給付については、今後の雇用失業情勢や社会経済情勢等を勘案しつつ、今後は中長期的な観点から議論していくべきとされています。

 このように様々な内容についての議論が行われています。年度末に向け、法改正が進められていきますので、労務ドットコムでは継続的にその状況をチェックしていきます。


参考リンク
厚生労働省「第82回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会資料」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001xf76.html

(大津章敬)

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