厚生労働省ワーキンググループがまとめるパワハラの定義と行為類型

厚生労働省ワーキンググループがまとめるパワハラの定義と行為類型 近年、職場のいじめや嫌がらせは、急速に社会問題として顕在化してきています。事実、都道府県労働局に寄せられる職場のいじめ・嫌がらせに関する相談は、平成14年度には約6,600件であったものが、平成22年度には約39,400件と年々急増しています。こうした背景から厚生労働省では職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループを開催し、この問題に取り組んでいます。

 そんな中、先日、このワーキンググループの報告案が公表されました。この報告書の中で、パワーハラスメントの定義やその行為類型のまとめがなされていましたので、以下で紹介しましょう。
パワーハラスメントの定義
 パワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。

パワーハラスメントの行為類型
 パワーハラスメントの行為類型としては、以下のものが挙げられる。ただし、これらはパワーハラスメントに含まれうる行為のすべてを網羅するものではなく、これ以外の行為は問題ないということではないことに注意する必要がある。
(1)暴行・傷害(身体的な攻撃)
(2)脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
(3)隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
(4)業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
(5)業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
(6)私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

 具体的な対策としては企業に対し、パワーハラスメント撲滅の方針の明確化を行った上で、相談窓口の設置や社員教育といった取り組みの重要性を示しており、今後、男女雇用機会均等法におけるセクハラ対策と同様の措置義務・努力義務が企業に求められることになるかも知れません。職場のいじめや嫌がらせは、社員の離職やメンタルヘルス不全の大きな原因にもなっており、企業としては行政の取り組みに先んじた行動が求められるところではないでしょうか。


参考リンク
厚生労働省「第5回「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」配布資料について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001yzy9.html

(大津章敬)

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