有期労働契約5年で無期労働契約に転換されること等が検討される有期労働契約の在り方
昨日(12月26日)、労働政策審議会は、労働条件分科会の報告を受け、有期労働契約の在り方について建議を行いました。この建議は、有期労働契約の適正な利用のためのルールを明確化していく必要が高まっていることから、労働条件分科会(分科会長 岩村正彦 東京大学大学院法学政治学研究科教授)で検討が行われ、その結果に基づくものになっています。そのポイントは以下のとおりです(画像はクリックして拡大)。
有期労働契約の締結への対応
有期労働契約は、合理的な理由がない場合(例外事由に該当しない場合)には締結できないような仕組みとすることについては、例外業務の範囲をめぐる紛争多発への懸念や、雇用機会の減少の懸念等を踏まえ、措置を講ずべきとの結論には至らなかった。
有期労働契約の長期にわたる反復・継続への対応
有期契約労働者の雇用の安定や有期労働契約の濫用的利用の抑制のため、有期労働契約が、同一の労働者と使用者との間で5年(以下「利用可能期間」という。)を超えて反復更新された場合には、労働者の申出により、期間の定めのない労働契約に転換させる仕組み(転換に際し、期間の定めを除く労働条件は、別段の定めのない限り従前と同一とする。)を導入することが適当である。
この場合、同一の労働者と使用者との間で、一定期間をおいて有期労働契約が再度締結された場合、反復更新された有期労働契約の期間の算定において、従前の有期労働契約と通算されないこととなる期間(以下、「クーリング期間」という。)を定めることとし、クーリング期間は、6月(通算の対象となる有期労働契約の期間(複数ある場合にあっては、その合計)が1年未満の場合にあっては、その2分の1に相当する期間)とすることが適当である。
また、制度の運用にあたり、利用可能期間到達前の雇止め抑制策の在り方については労使を含め十分に検討することが望まれる。
さらに、制度導入後に締結又は更新された有期労働契約から、利用可能期間の算定を行うこととすることが適当である。
なお、この仕組みによる期間の定めのない労働契約への転換が初めて生じ得る時期から3年を経過した場合において、利用可能期間満了前の雇止めが懸念された議論の過程を踏まえ、施行の状況を勘案し、期間の定めのない労働契約に転換させる仕組みについて検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることとすることが適当である。
「雇止め法理」の法定化
有期労働契約があたかも無期労働契約と実質的に異ならない状態で存在している場合、又は労働者においてその期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合には、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない雇止めについては、当該契約が更新されたものとして扱うものとした判例法理(いわゆる「雇止め法理」)について、これを、より認識可能性の高いルールとすることにより、紛争を防止するため、その内容を制定法化し、明確化を図ることが適当である。
期間の定めを理由とする不合理な処遇の解消
有期契約労働者の公正な処遇の実現に資するため有期労働契約の内容である労働条件については、職務の内容や配置の変更の範囲等を考慮して、期間の定めを理由とする不合理なものと認められるものであってはならないこととすることが適当である。
契約更新の判断基準
有期労働契約の継続・終了に係る予想可能性と納得性を高め、もって紛争の防止に資するため、契約更新の判断基準は、労働基準法第15条第1項後段の規定による明示をすることとすることが適当である。
1回の契約期間の上限等
労働基準法第14条の1回の契約期間の上限については、現行の規制の見直しの有無について引き続き検討することが適当である。
その他
雇止め予告を法律上の義務とすること及び有期労働契約締結時に「有期労働契約を締結する理由」を明示させることについては、措置を講ずべきとの結論には至らなかった。
参考リンク
厚生労働省「労働政策審議会建議「有期労働契約の在り方について」」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z0zl.html
(宮武貴美)
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