中国人事管理の先を読む!第28回「2012年中国労務トピックス3つの予測」
中国は今年、秋の共産党大会で共産党総書記の交代があるなど、大きな動きのみられる重要な年となります。そこで本日は、「中国人事管理の先を読む!」という本コラムのタイトルの通り、2012年の中国人事労務に関する大きなできごとを大胆に予測してみたいと思います。
【予測1】上海市の最低賃金が全国一に
昨年まで中国人民銀行が実施してきた金融政策が少しずつ功を奏し、インフレ基調が少しずつ収れんしはじめ、企業の資金調達が向上し、不動産価格の下落が落ち着いて来るでしょう。中国政府としてはまず企業経営の安定を図るため、GDPに占める輸出の比率が高く、欧州向け輸出で低迷を続ける広東省で最低賃金の引き上げを凍結する一方、比較的内需比率の高い上海市では引き続き最低賃金の引き上げを実施すると考えられます。具体的には、現在の1280元から1460元程度に引き上げ、それまで最低賃金の最高値を維持してきていた深圳市、広州市を抜き、中国で最も高くなる可能性があります。
【予測2】社会保険の外国人徴収の開始
4月頃には上海市でも就労外国人に対する社会保険の納付が始まり、2011年10月15日まで遡って徴収される可能性があります。保険基数は上限・下限基数により計算しますが、同じく4月には2011年の上海市平均賃金が発表されるため、4月からの納付については改定後の社会保険上限が、それまでの基数については現行の1万1688元が適用されます。企業は2011年10月―2012年3月と、2012年4月以降の二重基数による納付計算をしておく必要があります。
【予測3】中国賃金法の公布
2年以上前から中国国務院で草案審議され、2011年は中国社会保険法の施行により一旦棚上げされた状態になっていた「中国賃金条例」が、2012年には「中国賃金法」として公布される可能性があります。これにより工会(労働組合)に対し、企業経営情報の開示、昇給ガイドラインの審議、従業員の契約解除に関する承認など大きな権限を持たせることを認め、企業経営の側面では手続法が強化されます。現行の中国労働契約法に匹敵する程度のインパクトがあるため、公布即日施行は見合わされ、施行までには半年程度の猶予を与えられる可能性があります。工会法上、すでに設置条件を満たしている企業は工会の設立を、それ以外の企業では従業員代表の公選指名の実施指導を強いられることになります。
[執筆者プロフィール]
清原学
株式会社名南経営 人事労務コンサルティング事業部
海外人事労務チーム シニアコンサルタント(中国担当)
1961年兵庫県生。学習院大学経営学科卒。共同通信社、アメリカAT&Tにて勤務後、財団法人社会経済生産性本部にて組織人事コンサルティングに従事。大手エンジニアリング企業の取締役最高人事責任者(CHO)を歴任し、上海・大連・無錫・ホーチミン・香港の駐在を経て、2004年プレシード上海設立。中国進出日系企業約400社の組織構築、人事制度設計、労務アドバイザリー、人材育成に携わる。日本、中国にて講演多数。2011年からは株式会社名南経営にて日本国内での活動を行っている。
・独立行政法人 中小企業基盤整備機構 国際化支援アドバイザー
・ジェトロ上海センター 人事労務委託業務契約
・財団法人 社会経済生産性本部コンサルティング部 経営コンサルタント
・兵庫県中国ビジネスアドバイザー
・神戸学院大学 東アジア産業経済センター アドバイザー
参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
http://bizpresso.net/about
(清原学)
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