中国人事管理の先を読む!第30回「企業労働紛争協議調停規定」

中国 2008年1月の中国労働契約法施行以来、各地の労働仲裁委員会に申請、受理される労働紛争、特に企業と従業員との間の労働契約解除、経済補償等に関わる案件は大幅に増加し、現在、中国各地の労働仲裁委員会において審判される数は、年間70万件以上とも言われています。担当する労働仲裁委員会はマンパワーの面からみても、それだけの件数を処理するのは不可能であり、同委員会の機能の麻痺は大きな問題となっていました。

 このような状況下、2012年1月1日より「企業労働紛争協議調停規定」が人力資源社会保障部による公布に伴い、施行されました。企業内の労働紛争は一次的に企業と従業員との間で和解する旨、指導されることとなりました。本規定のポイントとして、企業は以下の通り対処することとなっています。
1.企業内に「労働争議調停委員会」の設置を行うこと。(第13条・14条)
2.企業内で発生した労働争議に関しては、労働争議調停委員会にて和解するよう働きかけること。(第4条)
3.企業を管轄する人力資源社会保障部は、企業の労働争議調停委員会設置に関する監督権を有すること。(第7条)
4.労働争議調停委員会において、一定の条件下での和解成立が困難である場合、二次的に労働争議仲裁委員会に仲裁申請が行えること。(第12条)
5.労働争議調停委員会の委員の選出、任期に関する規定(第15条・第19条)
6.調停の非公開性(第24条)
7.調停は、申請日から15労働日内に結審  しなければならない。(第29条)
8.企業の労働争議調停委員会未設置により労働争議が発生した場合の、人力資源社会保障部による指導改善命令(第32条)

 しかし、そもそも企業と従業員との間での和解成立は大変困難です。企業側も時間的、金銭的な負担を避け、処置を公正に審判してもらいたいという要望があり、労働仲裁委員会での判断を期待していましたが、本規定により労働争議調停委員会を設置することになり、負担は軽減されませんでした。また、工会(労働組合)との組織的な役割区分はどうするのかということも案ぜられるところです。

 いまのところ未設置に対する具体的な指導があったという話は聞きませんが、調停委員会の設置を行う以前に、労働契約解除等、従業員に係る措置については、日本人管理者一人で行うのではなく、日中双方の管理者による合議において実施する方が感情的な防衛の面からも賢明かと思われます。


参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
http://bizpresso.net/about

(清原学)

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