中国人事管理の先を読む!第31回「上海市最低賃金の調整」

中国人事管理の先を読む! 上海市人民政府が2012年2月28日、本年の最低賃金の引き上げを発表しました。調整は4月1日からで、現行の1280元から1450元まで引き上げられることになります。以下、通知の一部を抜粋します。

2012年4月1日から、上海市最低賃金基準は1280元/月から1450元/月に調整。最低時給基準は、11元から12.5元に調整。
今回の調整は、1993年に最低賃金制度を設けてから19回目であり、労働者の合法的利益の保護を目的としている。
最低賃金には、「社会保険料(個人負担分)」「住宅積立金(同)」「残業手当」「中・夜班手当」「高・低温手当」「有毒有害手当等特殊作業環境下の手当」を含んではならない。

 小生は当コラムの今年年初の回で「2012年中国労務トピックス3つの予測」と題し、本年の上海市の最低賃金が1460元まで引き上げられると予測しましたが、概ね近い線に調整されることになりました。170元、13%強の上昇です。

 従業員の最低賃金は4月給与からの調整になりますが、4月にはさらに社会保険料の改定があります。3月に昨年度の上海市の平均賃金の発表がありますので、その数値を待って、社会保険料の基数の決定、従業員の昨年度1カ月間の平均賃金の計算、社会保険料の確定という手続きを行い、新しい社会保険料を納付しなくてはなりません。

 今回の通知にもありますように、最低賃金には、以下のものを含んではいけません。
□ 社会保険料(個人負担分)
□ 住宅積立金(同)
□ 残業手当
□ 中・夜班手当
□ 高・低温手当
□ 有毒有害手当等特殊作業環境下の手当

 この規定は、毎年発表される通知に同じ文言で書かれているわけですが、このように最低賃金に何を含んではならないかを明確に書いているのは、実は上海市、北京市と一部の地域だけで、多くの地域では最低賃金の定義がなされていません。

 上海市では社会保険料や住宅積立金の個人負担分を最低賃金に含めてはならないと規定されているため、これらを上乗せした場合、少なくとも最低賃金の1.2倍程度が支給すべき賃金の下限となってくるわけです。

 日系企業の中にはこの規定を知らず、労務工(ワーカー)の賃金を常に最低賃金に合わせているところも多いのですが、実際は違法な状態です。賃金調整には十分な知識と注意が必要と言えるでしょう。


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(清原学)

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