厚労省特別部会で示されたパートタイマーへの社会保険適用拡大の基準と影響緩和措置
今週月曜日、厚生労働省において第13回社会保障審議会短時間労働者への社会保険適用等に関する特別部会が開催され、社会保険の被保険者範囲の拡大に関する具体的な資料が提示されました。今回は適用拡大の考え方を整理した上で、対象者の具体案と影響緩和措置について明記されていますので、以下でその概要を取り上げます。
適用拡大の考え方
・被用者でありながら被用者保険の恩恵を受けられない非正規労働者に社会保険を適用し、セーフティネットを強化することで、社会保険における「格差」を是正。
・社会保険制度における、働かない方が有利になるような「壁」を除去することで、特に女性の就業意欲を促進して、今後の人口減少社会に備える。
短時間労働者への適用拡大の具体案
・以下の5つの要件が明記されています。
(1)週20時間以上
(2)月額賃金78,000円以上(年収94万円以上)
(3)勤務期間1年以上
(4)学生は適用除外
(5)従業員 501人以上
従業員数については実務レベルでどのように把握するのかが注目されていましたが、今回の資料では「現行の基準で適用となる被保険者の数で算定」と明記されています。なお、この対象については3年以内に対象を拡大すると法律に明記されるとされています。
影響緩和措置
・短時間労働者への社会保険の適用拡大に伴い、流通・小売業や飲食サービスなど短時間労働者の割合が多い一部の業種では、加入者の平均賃金が下がる一方、新しく加入する者の医療費負担に加えて、後期高齢者支援金や介護納付金の負担が増えるため、保険料率も著しく上昇することが見込まれる。
・短時間労働者など賃金が低い加入者が多く、その保険料負担が重い医療保険者に対し、その負担を軽減する観点から、賃金が低い加入者の後期支援金・介護納付金の負担について、被用者保険者間で広く分かち合う特例措置を導入し、適用拡大によって生じる医療保険者の負担を緩和する。
[具体的な調整措置]
・短時間労働者には低所得者が多いことにかんがみ、各保険者に加入者数で按分されている後期支援金(加入者割分)・介護納付金の算定において、被用者の月額の報酬(標準報酬月額と標準賞与額の年平均額)が標準報酬月額に換算して98,000円(報酬額ベースで101,000円)未満の者とその被扶養者の人数を補正する。これによる負担減少分については、被用者保険内で分かち合う。
・この措置は、当分の間の措置であり、適用拡大による保険者への影響等を勘案しつつ、段階的に解消する。
以上の通り、かなり具体的な内容が明記されており、実務を想定した検討が進められていることが窺われます。実際にこの改正が実現するか否かはいまだ不透明ではありますが、企業にとっても、従業員にとっても大きな影響がある内容だけに継続的にチェックしていきたいと思います。
関連blog記事
2012年2月15日「厚労省資料に見るパートタイマーへの社会保険適用拡大の検討状況」
https://roumu.com
/archives/51911250.html
参考リンク
厚生労働省「第13回社会保障審議会短時間労働者への社会保険適用等に関する特別部会」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000025mv0.html
(大津章敬)
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