中国人事管理の先を読む!第34回「最低賃金と平均賃金」

中国人事管理の先を読む! 上海市人力資源社会保障局から3月14日、2012年度の上海市の最低賃金を1450元に引き上げると発表がありました。昨年の最低賃金が1280元でしたので、13.3%の上昇となります。以前、このコラムでもご紹介しましたが、最低賃金には従業員が負担する社会保険料、所得税を含んではならないため、実際には1450元の1.2―1.3倍が従業員に支給される最低給与ということになります。いずれにせよ、上海市ではここ数年、高い水準の賃金調整が続けて行われています。

 一方、北京市でも最低賃金の調整が行われ、2012年度の北京市の最低賃金は1260元になりました。昨年が1160元でしたので、およそ8.6%の上昇です。過去2年間、続けて20%以上の調整を行ってきましたので、今年は上昇を抑制した形となりました。最低賃金の発表と同時に北京市人力資源社会保障局が発表した内容のとおり、景気が鈍化していること、企業の負担を考慮したことがその背景にあるようです。物価上昇分を加味してみますと、実質的に賃上げが行われなかったに等しい結果となりました。

 今回の上海市と北京市の最低賃金調整により生じた差は、地方行政の事情や賃金格差に、いっそう深く影響を及ぼすこととなったわけです。また、3月28日には2011年度の上海市平均賃金の発表もありました。こちらは4331元になり、2010年度の3896元から11.2%上昇しました。最低賃金と同様、高い水準の調整となっています。前年の平均賃金は毎年3月中旬に発表となり、この平均賃金を基礎として多くの指数が改定されます。

 その中で、企業として大きく影響を受けるのは「社会保険料基数」です。平均賃金の発表を待って、毎年4月から当年度の社会保険基数が改定されます。上海市の社会保険料基数は下限を、最低賃金の60%、上限を300%として計算されます。したがって、今年度の社会保険料基数は2698.6元―12993元の範囲となり、従業員の社会保険料はこの基数範囲で決定することになります。下限、上限の引き上げに伴い、該当する従業員の社会保険料は増加しますので、企業の人件費に大きく影響を及ぼすことになるわけです。

 また、上海市では外国人の社会保険納付について、いまだに具体的な発表はありませんが、社会保険料基数の改定、特に上限の引き上げにより、外国人の社会保険料も昨年と比較し、実に600元強の負担増となっています。駐在員1人に対する社会保険料に関しても、今後は年々高騰していくことになるでしょう。


参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
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(清原学)

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