中国人事管理の先を読む!第35回「経営理念の策定」
日系企業であれば、ほとんどの企業は本社で経営理念や経営方針を持っていると思われますが、それをそのまま中国の現地法人でも浸透させようとすると、価値観や表現方法が中国にはそぐわないという場面に直面することがあります。
例えば、このような事例がありました。上場企業ではありますが、創業者が会社を興したときにその思いを込めて経営理念を作り、それが何十年も経った今でも、会社の経営理念として立派に行き渡っている。しかし、その内容を見ると、日本古来の故事を引用したり、汗水流して苦労を惜しまず勤勉に励む、というようなものです。もちろんこれはこれで非常に立派で感慨深い経営理念ではありますが、このような内容が中国人に受け入れられるのかということは、また別の問題になってきます。かと言って、創業者が思いを描いて作った経営理念ですから、あまりコロコロと変えてしまうのもはばかれます。
日系企業でも、「中国で事業をしていくのに、この経営理念でよいのだろうか」と悩まれている幹部も少なくありません。創業者や現在の経営者、あるいはその一族が「気にするな。中国には中国に合った経営理念にすればいい」と言ってくれればありがたいのですが、誰もなかなかそこには踏み込まないのが現実ではないでしょうか。中国に本社の経営理念をそのまま持ち込むべきかどうかの議論を行うことは大切です。一方、中国独自の経営理念を作ろうということになれば、留意しなければならないことがあります。
まず、中国で会社を作り、事業を始めるということは、中国で新たに起業をするという気持ちで取り組んでいただきたいため、経営理念を作る場合、創業メンバーである中国人従業員も巻き込みながらプロジェクトを進めてください。むしろ、自社の経営理念が表している意味をよく知っている日本人は策定プロジェクトを動かし、議論の方向をコントロールするだけにとどめ、イニシアティブは現地のスタッフが握るべきだと思います。あまり日本人が主導してしまうと、中国に合った斬新な発想ができなくなり、結果的に日本の経営理念の焼き写しになってしまうおそれがあるからです。
とは言え、前述したように経営理念のその根幹となる価値観は国が変わっても普遍的なものであるべきなので、あまり価値観の本筋を外してしまわないよう、日本人はコントロールし、あるいは方向を修正しながら進めていく必要があります。経営理念をメンバーが集まって作っていくことの意義は、策定に関わったスタッフたちに一番、強い思い入れが生まれるからです。
参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
http://bizpresso.net/about
(清原学)
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