AIJ問題により議論が進められる厚生年金基金の運用等に関する規制

厚生年金基金 AIJ問題により厚生年金基金の運営に関する諸問題がクローズアップされていますが、昨日(2012年5月16日)、厚生労働省において、その規制を議論する第3回 厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する有識者会議が開催されました。本日はこの会議で議論の対象となっている分野を紹介した上で、昨日の会議で議論された厚生年金基金の資産運用規制の方向性について取り上げたいと思います。

 この会議では、以下の諸問題についての議論が行われています。
(1)資産運用規制の在り方
1-1.受託者責任の在り方
○分散投資の徹底 ○受託者責任の徹底
1-2.基金の運用体制・運用プロセス
○基金の運用体制の強化 ○運用プロセスの在り方
1-3.基金のガバナンス・情報開示
○資産運用に関する意思決定プロセス ○情報開示
1-4.事後チェック
○監査
(2)財政運営の在り方
○予定利率の見直し ○積立不足への対応 ○解散基準の緩和
(3)厚生年金基金制度等の在り方
○代行制度の意義・役割 ○深刻化する代行割れ問題への対応 ○総合型厚生年金基金の在り方 ○中小企業の企業年金の在り方

 昨日の第3回会議ではこのうち①の資産運用規制の在り方についての議論が行われていますが、その見直しの方向性として以下の諸点が挙げられています。
分散投資の徹底
 各基金の運用の基本方針において、集中投資に関する一定の基準(例えば、一社集中投資の上限を設けるなど)を明確化する。また、各基金の運用の基本方針や運用に関する基本情報(総資産額、資産の種類別・運用機関別の委託額・割合など)は、原則として開示する。
運用の基本方針等
 政策的資産構成割合(基本ポートフォリオ)の策定を義務化すると共に、基金の運用の基本方針は厚生労働大臣へ届出を義務づけ、資産運用業務報告書の記載事項・様式についても分散投資の状況を適切に把握する観点から見直しを行う。
運用に携わる役職員の資質
 基金において運用に携わる役職員の資質を向上させる観点から、企業年金連合会における資産運用関連の研修の受講を各基金に義務づける。
資産運用委員会、運用コンサルタント
 資産運用委員会の基本的な構成メンバーに、資産運用に関する学識経験者や実務経験者、受給者を入れることを義務づける。また、運用コンサルタントについても、金融商品取引業法上の投資助言・代理業者の登録を行っていることを契約の要件とするよう義務づける。
基金のガバナンス・情報開示
 基金の役職員が、代議員会や加入者、事業主等に運用受託機関の選定・評価、運用実績の報告等を行うにあたって「説明すべき事項リスト(例)」をガイドラインに盛り込む。また、各基金の運用の基本方針や運用に関する基本情報(総資産額、資産の種類別・運用機関別の委託額・割合など)は、原則として開示する。
監事や行政による事後チェックの強化
 監事や行政による事後チェックを強化する観点から、監査ルールを見直し、監査におけるチェックリストの追加等を行うとともに、監査結果については代議員会に報告を義務づける。
中規模基金への対応
 資産運用における規模の利益等の観点から、中小規模基金への対応として、例えば企業年金連合会で運用受託することについては、今後の制度論の議論と併せて引き続き検討していく。

 この会議では次回以降、より大きな影響が予想される積立不足への対応や解散基準の緩和、代行割れ問題への対応、そして総合型厚生年金基金の在り方などの議論がなされる予定です。いずれも厚生年金基金に加入している企業経営にとっては大きな影響を与える内容だけに今後の議論の状況については逐次チェックしていきたいと思います。


参考リンク
厚生労働省「「第3回 厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する有識者会議」配付資料」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002ak4b.html

(大津章敬

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