中国人事管理の先を読む!第37回「残業管理と不定時労働制」
日本では「事業場外みなし労働」という、外勤の営業など事業所外で行われ、時間管理が困難な勤務については所定労働時間勤務したとみなすことができる制度や、「裁量労働制」のように一定の職務を行う従業員に対して残業手当を支払わないという制度があります。いずれも労働基準監督署への届出が必要ですが、中国では事業場外みなし労働や裁量労働制のような制度はなく、原則として営業担当者であれ管理職であれ、超過勤務については残業手当を支払わなければならないことになっています。
ところが近年、内販企業の増加や管理職への登用と共に、日本のルールをそのまま現地でも運用してしまっていたために、従業員から残業手当の未払いを請求されるケースや労働仲裁に持ち込まれるケースが急増しています。仮に、このように労使間での争議になった場合、前述のように残業手当は原則、いかなる職務の従業員に対しても支払わなければならないため、ほぼ100%の確率で企業側が敗訴しています。このようなリスクも想定し、企業としては対策を講じておかなければなりません。
2008年、労働契約法の施行に伴い、その前年である2007年1月から中国では、「不定時労働制」という制度が施行されています。これはまさに日本のみなし労働と裁量労働をセットにしたような制度で、必要な書類を管轄の労働局に申請し、許可を得れば管理職や外勤営業のような仕事を担当している従業員に対しては残業手当の支払いを免除されるという制度です。この不定時労働制の対象職務として、以下の4区分が定められています。
企業の高級管理人員、外勤人員、営業人員、当番者の一部、および他の標準労働時間により評定できない労働者
企業の長距離運送人員、タクシー運転手、軌道、港口、倉庫の積卸人員の一部および工作性質が特殊、機動作業要の労働者
企業の消防と生化学救援当番者、当番の運転手等
その他生産特性、労働特殊需要または職責範囲の関係による不定時労働制に適合する労働者
不定時労働制の申請については大きく分けて、(1)営業、運転手など、担当する職務に対する申請、(2)管理職のように階層に対する申請の2つに区分されます。近年、従業員の残業手当の削減を目論んで、企業側で従業員を安易に管理職に登用するケースが増加していることから、管理職に対する認定申請は職務認定の申請と比較して、2008年以降、どの管轄労働局でも非常に困難になってきています。
参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
http://bizpresso.net/about
(清原学)
当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。
最新情報の速報は「労務ドットコムfacebookページ」にて提供しています。いますぐ「いいね!」」をクリック。
http://www.facebook.com/roumu
当ブログの記事の無断転載を固く禁じます。