中国人事管理の先を読む!第40回「現地化と評価能力」
中国人社員に組織のポジションを委譲し、少しずつ部門や経営を中国人幹部に渡していく現地化は、多くの日系企業が進出当初から目的においているところではあります。私の知っている日系企業でも、日本で採用している中国人社員を現地の総経理に任命したり、組織上、日本人駐在員を中国人管理職の下のポジションにつけたりと、様々な工夫をされているところが近年目につくようになってきました。
この現地化を図っていく上で、人事管理上の課題として、中国人管理職が公正に部下の中国人社員を評価できる能力を持っているかということがあると思います。評価をいつまでも日本人管理者が行っているのであれば、なかなか現地化の途は遠いものとなってしまいます。
日系企業の中国人管理職の評価に関する傾向を見ておりますと、「全員に対し良好な評価(評価レベルでいうところのA評価)をつけてしまう」という、評価が甘くなってしまう傾向と、逆に「好き嫌いが評価に強く影響し、自己の業務の足を引っ張る部下に対しては、非常に悪い評価をつけてしまう」傾向があるようです。
上海のように社員同士の人間関係が希薄で、仕事を中心とした付き合いしかない地域では比較的、業務遂行の能力に基づいた評価が行えますが、地方都市に設立した企業で、地元出身の社員が多く、皆が幼い頃から顔見知りで親同士も付き合いがあるといった場合では、さらに評価に悩むことになります。なにしろ社員が家族ぐるみで顔見知りなのですから、悪い評価など付けようものなら、それこそ家に帰って何を言われるか分かりません。まさに村八分になってしまうわけです。
中国人管理職が評価を公正に行えるようにするためには、いくつかの方法があります。よく考課者訓練を実施しなければならないという意見も耳にします。もちろん評価に関するトレーニングも必須ですが、即効性はありません。また、評価の時期になってしまうと、トレーニングで学んだことも忘れ、従来の評価に戻ってしまいます。
私は中国での評価は、目標管理のように定量で評価し、絶対評価として評価を行うもの以外は、「相対評価」で評価を行うことが良策と考えています。もちろん評価者である中国人管理職の評価能力の向上に伴って、絶対評価に移行していくことも念頭に置いて。相対評価であれば、昇給や賞与の原資もコントロールしやすくなります。ただ、ある程度の母数があるグループでしか相対できないという欠点はありますので、部門を跨いだ相対区分が必要かと思います。
参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
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(清原学)
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