中国人事管理の先を読む!第44回「職務給の要件「個人間公正の原則」」

職務給の要件「個人間公正の原則」 前回は職務給制度における「内的公正の原則」というお話をしました。内的公正の原則とは、会社の中には様々な職務(仕事)が存在し、それぞれ職務遂行の難易度やそれを担当できる人材の希少性、職務遂行に要する習熟時間の長短の違いがあるので、各職務間で賃金の格差をつけることは公正であるというものでした。もしも賃金差がなければ、会社にとって重要な仕事を担っている社員が流出し、秀でた能力を有する社員の採用が賃金のミスマッチが原因で困難になってしまいます。そこで今回は、もうひとつの職務給の決定要因である「個人間公正の原則」というお話をしたいと思います。

 同じ仕事を担当する2人の社員について、「同一労働同一賃金」という言葉で表されるように、職務(仕事)が同じだからという理由で同じ賃金にした場合を考えてみましょう。一方の社員は仕事の処理スピードも速く、またミスもない。それに比べて、もう一方の社員はしょっちゅうミスをしてしまう。仮に、この2人を同一労働だからといって同じ賃金にしてしまうと、不公平が生じますね。あたかも計画経済時代のソビエトのようなものです。

 そこで担当する職務は同じでも、その中で職務遂行能力の差は必然的に起こるので、その能力の度合いに対して人事考課を行い、個人間、つまり社員間で賃金に差をつけていくのが公正であるという考え方が「個人間公正の原則」です。職務給といえども、単に仕事によってのみ賃金が決まるわけではなく、やはり人事考課は制度上、欠かせないものなのです。

 ただ、日本の会社の多くが運用している「職能資格制度」、つまり年功的で終身雇用という長期雇用を前提とした人事制度と職務給制度との人事考課の方法とは大きな違いがあります。職能資格制度はその成立の根拠を「社員の能力」に置いていますので、人事考課についても「能力評価」という社員が保有している能力に対する評価が行われます。ここで厄介なのは、この「能力」というのが目に見えないことです。従って、やむを得ず、「能力を持っているであろう」とか「このようなことができるから能力を持っているはずだ」といったように、保有能力を推測しながらしか評価が行えません。

 みなさんが日本本社で管理し、あるいは管理されている人事制度では、評価が非常に曖昧であったり、等級を決定する定義付けがぼんやりしていたりするのは、実はこの職能資格制度が「保有能力」という、まことに曖昧な属人的要素に立脚して成り立っているものであり、それこそが職能資格制度の持つ特徴であるからなのです。


参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
http://bizpresso.net/about

(清原学)

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