中国人事管理の先を読む!第46回「日中人事制度の相違(1)職務内容の明確性」

中国人事管理の先を読む! 今回は日本と中国の人事制度の違いについて、会社は社員が担当する職務内容をどの程度明確にしているか、あるいは明確にする仕組みを用意しているかという側面から比較しながらお話したいと思います。

 まず、みなさんは中国企業または欧米企業の求人広告を目にしたことがあるでしょうか?機会があればご覧いただければと思いますが、特に欧米企業の求人広告には募集している人材が入社後にどのような仕事を担当するのか、それはもう驚くくらい詳細に書かれています。それだけではなく、その仕事を遂行していくためにはどのような経験が何年くらい必要なのか、またどのような能力を保有していることが望ましいのかなど、とにかくいろいろな条件が細かく書かれています。これが欧米企業の人事管理が得意とする「Roles and Responsibilities(役割と責任)」というものなのです。

 彼らは日常的にこの役割責任で管理を行っているため、人材の不足が発生したとしても直ちに必要とする人材像をイメージできます。採用された人も、入社後に思い描いていた仕事と実際に担当することになった仕事が異なっていた、あるいは仕事と能力がミスマッチであったというようなことが起きにくいようになっています。一方、日本の企業の場合、募集の段階ではここまで詳しく書かれていません。普段からこのような人事管理がなされていないので、必然的に募集するときにも、どのような人材が必要なのか、その人材像がどうしても曖昧になってしまうのです。

 また、給与処遇についても欧米企業の場合は報酬をいくら払うのかが明らかにされています。これは本来なら当たり前のことです。ところが、日本の企業は求人段階で社員に給料をいくら払うのかをはっきりさせていない場合が多くあります。「給与については応相談」という求人広告をよく見ますよね。給料をいったいいくらもらえるのか、本当に相談すれば希望に応じてくれるのか(と思えば実はそうでもないですね)が分からず、欧米人の目には非常に奇異に映ります。これは簡単に言えば、仕事と給与相場の基準がきちんとできていないということになるのかなと思います。

 このように日本の企業と欧米企業との間では、その職務の明確性に大きな差があります。それで中国は?となりますと、中国企業の考え方や人事管理の手法は欧米企業に非常に近いということが言えると思います。日系企業の人材戦略を考えた場合、職務を基準に社員を管理するという価値観を理解していく必要があるかと思います。


参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
http://bizpresso.net/about

(清原学)

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