[ワンポイント講座]内定者に研修を受講させる場合の賃金・労災保険の取扱い
あと4ヵ月ほどで平成25年4月の新卒者が入社してきますが、これからのシーズンは内定者を研修や忘年会などの社内行事に参加させる企業も多いのではないでしょうか。内定者に研修等を受講させた場合には賃金の取扱いや、万が一、内定者が事故に遭いケガをしてしまった場合、労災保険が適用されるのかといった問題が出てきます。そこで、今回のワンポイント講座では、内定者にまつわるこれらの取扱いについて解説しましょう。
1.研修を受講させた場合の賃金の取扱い
内定者に研修を受講させた場合の賃金の取扱いについては、その研修が労働時間に該当するか否かによって対応が分かれることになります。この点に関連して通達(昭和26年1月20日 基収第2875号)が出されており、「就業規則上の制裁等の不利益取扱による出勤の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にはならない」とされています。つまり研修への参加が会社の指揮命令により義務づけられているものであれば、それは労働時間となり、その対価として賃金を支払う必要が出てくることになります。
2.内定者が研修や社内行事に参加する途中、事故に遭いケガをしてしまった場合の労災保険の取扱い
そもそも労災保険は、業務上の事由または通勤により、労働者が負傷、疾病、障害、死亡した場合などにおいて、必要な保険給付を行う制度となります。ここで、「労働者」の定義を確認しておく必要がありますが、労働基準法の労働者と同一の者を指し、事業に使用され賃金を支給される者のことをいいます。それでは内定者はこの労働者に該当するのでしょうか?
労働基準法上の労働者に該当するかを判断する際の基準としては、主に以下の6点が挙げられます。
仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
業務遂行上の指揮監督の有無
拘束性の有無
代替性の有無
報酬の労務対償性の有無
専属性の程度
通常、上記の要素を総合的に勘案し、労働者に該当するか否かを判断しますが、内定者についても同様に考えることになります。そのため、研修については上記1.のとおり、研修への参加が義務づけられ賃金を支払われているものであれば、労災保険の対象とされます。しかし、忘年会のように業務とは関係のない行事については、業務上のものとはされないことからに労災保険の対象外となるというのが基本的な解釈です。
このように労災保険の対象となるためには様々な条件が設けられていることから、会社としてはこのポイントを踏まえた上で賃金・労災保険について適正な取扱いをすることが求められます。
(福間みゆき)
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