[ワンポイント講座]在宅勤務者の雇用保険の加入取扱い
近年、IT技術の発達により、働き方の多様化が進んでいます。特に出社せずに在宅で業務を行う労働者は増えており、このような在宅勤務者への労働法の適用については疑問を抱くこともあります。そこで今回は、労働法の中でも在宅勤務者の雇用保険の取り扱いについて、取り上げましょう。
在宅勤務者の雇用保険の適用においては、事業所で勤務する労働者(以下、「通常労働者」という)と同一性があれば、原則として被保険者となります。この同一性の判断には、まず、就業規則等の諸規定の適用(性質上適用できない条項を除く)の有無で判断されることになっています。この就業規則等の諸規定の中には、在宅勤務者専用の就業規則等(労働条件、福利厚生が他の労働者と概ね同等以上であるものに限る)が適用される場合も含まれることになっています。
これを踏まえた上で、同一性の判断では、以下のような点に留意して総合的に判断されます。
指揮監督系統の明確性
在宅勤務者の業務遂行状況を直接的に管理することが可能な特定の事業所が、当該在宅勤務者の所属事業所として指定されていること
拘束時間等の明確性
a.所定労働日および休日が就業規則、勤務計画表等によりあらかじめ特定されていること
b.各労働日の始業および終業時刻、休憩時間等が就業規則等に明示されていること
勤務管理の明確性
各日の始業、終業時刻等の勤務実績が、事業主により把握されていること
報酬の労働対償性の明確性
報酬中に月給、日給、時間給等勤務した期間または時間を基礎として算定される部分があること
請負・委任的色彩の不存在
a.機械、器具、原材料等の購入、賃借、保守整備、損傷(労働者の故意・過失によるものを除く)、事業主や顧客等との通信費用等について本人の金銭的負担がないことまたは事業主の全額負担であることが、雇用契約書、就業規則等に明示されていること
b.他の事業主の業務への従事禁止について、雇用契約書、就業規則等に明示されていること
以上のように、在宅勤務者はあくまでも通常労働者と比較し、勤務場所のみが事業所から自宅に移った状態であることが雇用保険の適用の判断になると言えます。在宅勤務を今後始める場合にはこのような内容も事前に確認しておきたいものです。なお、これらの判断基準は、「雇用保険 業務取扱要領(平成24年8月20日版))に基づき記載しています。
(宮武貴美)
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