中国人事管理の先を読む!第55回「リスク管理を考える」

中国人事管理の先を読む!第55回「リスク管理を考える」 一昨年ほど前から、日本各地の商工会議所や経営者団体からお誘いをいただいて、年間40回程度の講演を担当しています。最近では、「中国現地法人の就業規則作成のポイント」というテーマでお話をすることもあります。中国関連のテーマは、昨今のカントリーリスクのあおりを受けるなど、主催者側としては集客に苦慮しているようですが、このテーマに関して言えば、結構集客が良いようです。これから海外へ出ていこうと考えている企業には投資先の選択という“余地”が残されていますが、既に中国に進出している企業は現地のリスク管理という課題を永続的に考えていかなければならない訳ですから。

 先般も講演に来られていたある企業の本社の方に、「中国では嫌な目に遭った」というお話を伺いました。「何をされました?」と詳しくお聞きしましたところ、取引相手から騙された、契約を反故(ほご)にされた、従業員は給料を上げろとうるさかった、だから中国以外の国へ出て行こうと考えているということをしきりにおっしゃっていました。そこで「中国以外だと、ASEANのどこかですか?」とさらにお聞きすると、「いや、まだ具体的には決まっていません」というお答えをいただきました。 しかし、嫌な目にあったから中国は嫌だという消極的な考えであれば、どこの国へ行っても同じだと思うんですね。もちろん中国には事業を行っていく上での様々なオペレーションリスクはありますし、両国の関係が悪くなれば、それなりにカントリーリスクも浮上してきます。でも実は、過去からその繰り返しであったりもする訳です。では、ベトナムなら安心か、ミャンマーならそのようなリスクはないのか、あるいは中国よりは少ないのか、と言えば決してそうではないと思います。それぞれの国には中国より少ないリスクもあれば、逆に中国にはないリスクも存在したりする訳ですから。

 肝心なのはどの国を選択したとしても、そのようなリスクをまともに受け、それが故にその国が嫌いになるのではなく、やはり企業としてきちんとしたリスク管理を行っていくことだと思います。あまりよい言い方ではないかもしれませんが、日本人はどちらかと言えば性善説に立って物事を捉えがちだと思います。でも、いったん国境を越えたら、相手を信頼するだけでは解決できない問題もたくさんあるということに気付かなければならないのかもしれませんね。


参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
http://bizpresso.net/about

(清原学)

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