中国人事管理の先を読む!第56回「派遣から直接雇用へ」
2013年7月1日から施行となる「労務派遣に関する適用の厳格化」の影響で、派遣雇用を行っている企業に直接雇用への変更を行う動きが出てきました。私も数社から移行手続きのご依頼を受け、中には今年4月から直接雇用への変更を行いたいと要望されている企業もあります。そのような企業は既に従業員への説明会を実施し、労働契約書へのサインも終え、とりあえず一段落している状況です。
これまでに現地の日本人管理者の方や、場合によっては本社人事部の方を交え、移行の段取りや従業員への説明方法について議論を行ってきましたが、実際に実務を担当してみますと、単に派遣雇用から直接雇用への切り替えと言って片付けられるほど簡単な作業ではないことが分かります。ここではそのポイントとなる事項について、いくつかの事例を解説してみたいと思います。
まず会社側が準備すべき書類について、そもそも従業員と派遣会社との間には雇用関係が存在しますから、雇用主である派遣会社を退職しなければなりません。そのため、従業員から派遣会社へ提出する辞表が必要となります。これは派遣会社と従業員との間の話ですので、会社が関与すべき問題ではありませんが、会社が辞表の雛形を用意してもよいと思います。形式は一般的な辞表の形で構いません。
その後、従業員は会社との雇用関係を結ぶので、当然のことながら労働契約書が必要になります。これに併せて、就業規則の見直しも必要でしょう。前述のように、もともと従業員は派遣会社との雇用関係があったため、就業規則すら具備されていない企業もあるようですし、就業規則の内容が労務派遣に準じている場合もありますので、就業規則の内容確認は必要でしょう。
ここまでは想定される手続きの中で行えますが、ここから少し面倒な検討が必要です。「直接雇用後の従業員の処遇はどうするのか」「労働契約の変更に当たるとすれば、直接雇用の契約を締結する際に経済補償は行うのか」、更に「これを機に退職する従業員が出た場合、経済補償は行うのか」という問題です。このコラムを読んでいるみなさんの中には、従業員の方もいらっしゃいますので手の内を詳しくお話しすることは避けますが、法律の解釈も含め、ここのところでしっかりと議論しておかなければ、直接雇用への移行に当たってかなり混乱してしまう、ということだけお伝えしておきます。
参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
http://bizpresso.net/about
(清原学)
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