中国人事管理の先を読む!第58回「最低賃金と平均賃金」

中国人事管理の先を読む!第58回「最低賃金と平均賃金」 2013年3月29日、上海市人力資源社会保障局より、上海市の本年度の最低賃金調整に関する発表が行われました。本年度の最低賃金は1,620元となり、昨年度の1,450元から170元、11.7%の引き上げとなりました。昨年度の最低賃金は上昇率が13%を超えていましたので、比較すると伸び率は若干鈍くなりましたが、引き続き高い水準には変わりありません。最低賃金に関する情報を毎年、誌面を変えながら書いておりますが、もはや、さほど珍しい内容でもなくなってしまいました。それほど、現在の中国では10%を超える賃金相場の調整が当たり前になってしまった感があります。

 さらに3月25日には、昨年の平均賃金に関する通知もありました。昨年度の上海市の平均賃金はひと月あたり4,692元、一昨年の4,331元に比べますと8.3%の増加ということになります。一昨年のその前年に対する伸び率が11.2%でしたので、若干、平均賃金の増加は抑制されていることがこの数字から分かります。

 私が上海に来たばかりの頃には、最低賃金は確か600元余りで、平均賃金も1,300元に届くか届かないかというところだったと記憶しています。それを考えると、この10数年の間に平均賃金は3.5倍くらいに増えたわけです。

 所得が増えるということは、人件費の増加という側面をみれば、企業にとって利益の圧縮という厳しさを表しますが、一方では購買力の上昇という側面もありますので、一概に悲観することでもなく、中国という国をどう捉えるかというテーマに尽きるかと思います。

 管理者にとって、最低賃金の上昇は給与自体のみならず、残業手当の単価や賞与の基数など、多くの賃金の上昇を同時に招くので、理解しやすいと思います。それに対し、平均賃金は「何に使われるのですか?」というご質問をよくいただきます。

 平均賃金は社会保険の基数を決めるために使われ、平均賃金の上昇は社員の社会保険料の増加に直結します。社員の社会保険料は毎年4月に改定されます。そのときにこの平均賃金が用いられますので、必ず毎年3月までに通知が行われます。特に平均賃金が上がることで、社会保険基数の上限がその分、上がっていきます。賃金や残業手当のような直接的な人件費以外の間接的な人件費も増えますので、企業経営にとっては総額人件費管理が非常に重要な課題となります。


参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
http://bizpresso.net/about

(清原学)

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