[ワンポイント講座]高年齢雇用継続給付における賃金支払時期の取扱い

電卓 改正高年齢者雇用安定法が施行されたことで、高年齢者の賃金設計の見直しを検討する企業が増加しています。その際には、雇用保険の高年齢雇用継続給付の理解が欠かせませんので、今回は同給付を受給する上で必要となる賃金の考え方について解説します。
[高年齢雇用継続給付とは]
 高年齢雇用継続給付は、65歳までの雇用の継続を援助、促進することを目的として雇用保険制度から本人へ直接支給がされるものです。具体的には、60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者の賃金が、60歳到達時点の75%未満に低下した場合に支給されます。支給額は、1ヶ月ごとに支払った賃金に対して決定され、その賃金については、以下のように考えます。

[申請月の賃金の考え方]
原則:その月に実際に支払った賃金が対象
 申請月の賃金とは、原則としてその月に支払われたもののみを対象とします。したがって、その月に働いた分の賃金であっても、支払方法が後払いのため、翌月に支払う場合(例えば、後払いをしている時間外手当等)には、その申請月の賃金には含めず、実際に支払った月(翌月)に含めることとなります。そのため、遡り昇給があり、数ヶ月の昇給差額分を後からまとめて支払った場合にも、その差額分は、まとめて支払われた月の賃金とされます。具体的な例を挙げると、次のようになります。
○2月に支払った賃金 ⇒ 2月分に含める
○2月が算定の対象期間であるが後払いであるため3月に支払った賃金 ⇒ 3月分に含める
○4月昇給ではあるが昇給が遅れ、4月分および5月分を6月に支払った差額 ⇒ 6月分に含める
例外1:賃金の未払いはその発生月に含める
 原則はのとおりですが、賃金の未払いが発生している場合については、例外的な取扱いがされます。賃金の未払いとは、本来支払うべき所定の支払日を過ぎても支払いがされず、支払遅延が発生している状態のことです。この未払い分については、未払いが発生した月(本来支払うべき月)に含めるという取扱いがなされます。なお、何らかの理由で、金額が確定していないときには、未払いという取扱いにはならず、支払額が確定し支払った月の賃金に含めることとなります。
例外2:数ヶ月分を一括して支払った賃金は各月に按分する
 毎月支払うべき賃金を数ヶ月分一括で支払った場合には、支払った月以後の各月に按分することとなります。例えば、定期券購入のために、通勤手当を数ヶ月分まとめて支払った場合があります。

 高年齢雇用継続給付の申請にあたっては、賃金を含める月を誤ると、その月の支給がされない、あるいは減額されてしまうということになり兼ねません。また、高年齢者の賃金設計を考える上でも、申請月の賃金の考え方を誤っていると、試算が異なってきてしまうため、十分に理解をしておく必要があります。

 なお、これらの判断基準は、「雇用保険 業務取扱要領(平成24年8月10日版)」に基づき記載していますが、個別の事情により異なる取扱いがされる可能性もあるため、具体的事案については、管轄のハローワークにご確認ください。


関連blog記事
2012年11月5日「高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について」
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/51230813.html

(佐藤和之)

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