中国人事管理の先を読む!第59回「生産性と人事制度」
13年前、私が上海に赴任してきた2000年の上海市の最低賃金は600数十元だったと記憶しています。それが今年は1620元ですから、1000元も上昇したことになります。最低賃金が上がればそれにつられて社会保険料や残業代など、ほかの要素も上がっていきますから、総額人件費でみれば、ここ十数年で驚くほど増えているのは間違いありません。当時から同じ事業、特に労働集約型の生産を行っている製造業は、徐々に利益が圧迫されているというのも頷けるところです。これだけ人件費負担が増えていますので、根本的に事業のあり方を考えていかなければ、先細りになってしまうのも目に見えています。
数年前までは設備投資に要する費用と人件費を比較して、人手に頼った方が安い時代もありましたが、人件費の上昇のみならず品質の向上、労務リスクの回避等、経費の抑制以外の効果も考えて、少しずつ人員を減らしながら、できるところから自動化を検討している企業や、既に自動化を実施している企業が次第に多くなってきているようです。
このように、生産性を上げながら企業の事業効率の向上を図っていくわけですが、それと同時に人事制度の整備、見直しも欠かすことのできない経営課題のひとつだと思います。企業の業績がよかったときは、従業員の賃金もどんどん上げればよかったのですが、これからは中国での企業経営も今までとは違った局面を迎えようとしています。従業員の処遇についても、いわゆる「選択と集中」を考えながら、「財」という経営資源の効率的な分配を考えていかなければならないと思います。
私たち人事制度を専門に手がけている者が人事制度を考えていく場合、制度に関するひとつの指針があります。それは、「リテンション対象の従業員にとってはメリットが多く、リタイアしてもらいたい従業員にとってはメリットの少ない制度」にするということです。つまり、頑張っている従業員を厚く処遇し、そうではない従業員の実入りを少なくする、ということですね。厳しい言い方かもしれませんが、従業員の労務管理を行う上で大切なのは、パフォーマンスの低い従業員が自ら会社を辞めていく仕組みを作っていくということです。口で言うのは簡単なのですが、どうやってそのような仕組み、風土を作っていくのかは、知恵を絞って考えていく場面でもあります。
参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
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(清原学)
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