中国人事管理の先を読む!第62回「ベースアップと昇給(1)」
春先から夏にかけて各社は昇給の時期を迎え、当社にも今年の昇給の相場に関するお問い合わせが多くなっています。以前と比べ、消費者物価が下がってきているとはいえ、いまだに最低賃金の調整は高い水準を維持し、昇給率も10%前後を確保している企業が多いようです。
しかし、日系企業から「今年の昇給は各社どの程度ですか?」と聞かれることはあっても、「今年のベースアップはどの程度ですか?」と聞かれることはほとんどありません。各社はベースアップについてどのようにお考えなのでしょうか?仮に10%の昇給原資を持っている中で、その予算をどのように使われているのでしょうか?
このコラムでも過去に解説したことがありますが、中国では政府の政策も含め、所得水準が年々上昇していますので、賃金管理におけるベースアップというものを無視して昇給を行うことはできません。日本ではもう20年近くも物価が上がっていませんので、賃金でのベースアップはすでにその姿を消してしまいました。今後、アベノミクスの効果により日本がインフレ基調になれば、ベースアップも復活するかもしれませんが。
読者のみなさんにぜひ覚えておいていただきたいのは、昇給には「ベースアップ」と「(狭義の)昇給」の2つがあるということです。以下ではそれぞれの賃金管理における効果はどのようなものかについて説明したいと思います。まず、ベースアップの効果は「賃金における外部との競争力の増長」であり、「(狭義の)昇給は「賃金管理における内部の所得の適正配分」と言えると思います。仮に10%の昇給原資があったとして、それをすべて(狭義の)昇給、つまりベースアップを考慮せず、社員個々の評価に対する昇給のみに反映させますと、頑張った社員は報われ、そうでない社員はあまり賃金が上がらないということが起こります。
これは一見、正しい昇給のあり方のように思われますが、社員の平均水準、つまり会社全体の賃金水準からみれば、ライバル企業や地域性との比較においてはあまり競争力を持たなくなってしまいます。これにより、賃金水準の高い企業へ社員が流出してしまう、新規採用を行う際に賃金が合わなくなってしまうという弊害を生むことになります。
つまり、昇給管理を行う場合には、昇給原資をすべて(狭義の)昇給に使い果たしてしまうということを避けなければならないのです。
参考リンク
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(清原学)
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