中国人事管理の先を読む!第68回「懲戒処分のタイミング」

懲戒処分のタイミング 先日、当社の顧客から、従業員の懲戒に関する相談がありましたので、ご紹介したいと思います。

 そこは従業員数が250名くらいの製造型企業なのですが、ワーカーの一人が今年の春、上長である班長を構内で殴ってしまったらしいのです。すかさず現場責任者が本人に注意を与え、その場は収まったようなのですが、その後、現場の聞き取りなどを行ってみると、そのワーカーは就業時間中に自宅に戻ったり、構内をうろついたりと職場の離脱が多く、勤怠状態も非常に悪いということが判明しました。しかし、労働契約の更新にはあと1年ある。そこで私のところへ「どうしたらよいでしょうか?」とご相談に来られたわけです。

 私は、どうしたらではなく、それはもう即刻懲戒解雇ですよとお答えし、詳しい状況をお聞きして、就業規則も見せていただいた上で契約解除の通知書をお作りしました。本人への通告の方法やそのときは会話を録音しておくこと等々、細かくシナリオをお教えしたのですが、なぜいままで放っておいたのだろうとつくづく感じていまいました。

 従業員に対して懲戒を与えたい、契約の解除を行いたい、それについて法律上、何か留意すべき点はあるかという内容は、私のところに寄せられるご相談の中でも非常に多いものです。その中には、「もう許せない。どうしてもクビにしたい。どうしたらクビにできるか、その方法を教えてほしい」という、総経理がかなり激昂されている案件もあります。まあまあとなだめながら、「で、何がありました?」と聞いていくにつれ、「うーん、気持ちはわかりますが、それだけで解雇はちと難しいですねえ」というものも少なくはありません。実はその多くがそれまでにも伏線があり、何度も同じようなことを繰り返してきたものなのです。それがある時、「もう許せない」と一気に怒りが噴出してしまったのですね。今まで細かくやっておけばよかったのになあ、と思わずため息をついてしまいます。

 従業員への懲戒は、それがどのような事情、状況であれ、それによる会社のリスクがゼロということはまずありえません。労務リスクの防止は、リスクを低減させることが重要であって、そのためには普段から細かなことをいくつ積み上げてきたかです。このくらいいいやということが、将来どれだけ大きなリスクになってしまうか、その点をぜひ理解し、日常の労務管理に努めていただきたいと思います。


参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
http://bizpresso.net/about

(清原学)
http://blog.livedoor.jp/kiyoharamanabu/

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