「1年単位の変形労働時間制にかかる天災時のカレンダー変更は不可」規制改革ホットラインへの厚労省回答
先日、内閣府から「規制改革ホットライン」で受け付けた提案等に対する所管省庁からの回答が公表されました。「規制改革ホットライン」とは、環境や技術変化に対応した規制改革をタイムリーかつ着実に進めるため、広く国民や企業等からの提案を受け付けるというものであり、現在も集中受付を実施している最中です。
今回公表された回答は、平成25年3月22日から8月31日の間に受け付けられたものの中から所管省庁が検討し、回答がまとまったものであり、現在500件程度が公表されています。回答は、「金融・証券・保険」、「エネルギー・環境」等の26分野に分けられていますが、今日は、そのうち「雇用・労働」の一部について紹介しておきましょう。「雇用・労働」の分野では17項目に対して回答が行われていますが、そのうち措置の分類の項目数は以下の通りになっています。
対応:2項目
対応不可:9項目
現行制度下で対応可能:1項目
検討:2項目
検討を予定:3項目
対応不可になったものには、「1年単位の変形労働時間制にかかる天災時のカレンダーの変更」がありますが、これについては具体的に以下のような内容と所管省庁の検討結果(措置の概要)となっています。
【具体的内容】
台風や大雪等の天災が発生した場合、得意先の稼働状況や従業員の安全確保等に鑑みて、急遽、稼働を停止することがある。1年単位の変形労働時間制を導入している場合について、このような天災を事由とする場合に限り、変更事由等を就業規則に規定し、総労働日と総労働時間の増加がないことを条件として代替日未決定の労働日の振替を認めることとすべきである。
【提案理由】
1年単位の変形労働時間制では、労働時間の特定後は、労働日の変更は一定条件の下で認められているが、労働日の振替は代替の出勤日が決まっていない状況では認められていない。しかし、天災による稼働停止は事業主が責を負うべきものではなく、不可避なものであり、上記のように緊急的な対応を認めることとすべきである。法制上、労働者保護ととともに企業負担を軽減する配慮がなされるべきであり、柔軟性の低い制度では、企業の競争力を削ぎ、ひいてはわが国経済の活力低下の一因となりかねない。
【措置の概要】
労働時間に関しては、労働者の健康や生活時間の確保を図る必要があり、要件緩和は困難です。
使用者に一方的な振替権限を与える形での要件緩和は、対象期間中の業務の繁閑に計画的に対応するための制度である変形労働時間制の趣旨に反することとなることから、現行の制度運用の変更には慎重な対応が必要であると考えます。なお、労働時間法制については、ワークライフバランスや労働生産性の向上の観点から、労働政策審議会で総合的に議論することを想定しています。
対応不可という項目が多いことを考えると、提案を行う側としてはなかなか受け入れられないという思いがあるかもしれませんが、実際に提案ができ、検討が行われ、それが公表されるというのは、とてもよい仕組みと言えるのかもしれません。この回答は今後も更新されるようですので、当ブログではどのような内容が取り上げられているのか掲載していきたいと思います。
参考リンク
内閣府「受け付けた提案等に対する所管省庁からの回答:「規制改革ホットライン」」
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/hotline/h_index.html
(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/
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