規制改革会議が提案した新たな適用除外制度(ホワイトカラーエグゼンプション)の創設
労働時間法制の見直しは来年度以降の大きな注目ポイントになりますが、先日(2013年12月5日)に開催された第22回規制改革会議の中では、雇用ワーキング・グループから「労働時間法制等の見直し」についての報告がなされました。この中ではいくつかの重要な論点が示されていますが、なんといっても注目はホワイトカラーエグゼンプションの再来である「労働時間の新たな適用除外制度」の提案です。まずはその該当部分をご覧ください。
【一律の労働時間管理がなじまない働き方に合い、健康確保と両立する適用除外制度の創設】
現在ある労働時間の例外的措置のうち、①管理監督者の適用除外、②裁量労働制、の2つについては、前者は“名ばかり管理職”を生んでいるという問題が指摘されており、後者は手続が煩雑で利用度が低い。このため、分かりやすく実態に合致した新制度を創設する。
適用除外の範囲は、国が対象者の範囲の目安を示した上で、基本的には、企業レベルの集団的な労使自治に委ねる(労使代表で労使協定を締結)。また、割増賃金
制度は深夜を含めて適用しないこととする(労基法37条)。
使用者の恣意的運用を排除するため、取り決め内容(労使協定)を行政官庁(労働基準監督署長)に届け出ることを義務化する。
適用除外対象者の健康確保を徹底し、ワークライフバランスを促進するため、①労働時間の量的上限規制と、②休日・休暇取得促進に向けた強制的取組みをセットで導入する。①②それぞれについて、下記の具体例のような取組みの中から、産業、職務等の特性に応じて、労使の合意によりいずれか一つまたは複数の組み合わせを選択する。そのための枠組みを国が設定する。
国が枠組みを設定するにあたっては、企業活動の実態に合わず、企業の活力低下につながることがないよう、適切な選択の幅が用意されるべきである。また、非常時においては、労使の取り決めにより、一時的にこうした規制を緩和できるよう、十分配慮されるべきである。
一定の試行期間を設け、当初は過半数組合のある企業に限定する。
【例:セットで導入すべき取組み。いずれか一つ又は複数の組合せとする】
(1) 労働時間の量的上限規制
・一定期間における最長労働時間の設定
・翌日の労働開始まで健康安全確保のための最低限のインターバルの導入、など
注:経営層に近い上級管理職等については、労働時間の量的上限規制に代えて健康管理のための適切な措置の義務付けを行うことも考えられる。
(2) 休日・休暇取得に向けた強制的取組み
・年間104日(週休2日相当)の休日を、労使協定で定めた方法で各月ごとに指定して取得
・年休は労使の協議に基づいて柔軟かつ計画的に付与(年休時季指定権を使用者へ付与した上で労働者の希望・事情を十分考慮)
・長期連続休暇の義務化、など
このように労使協定の締結による新たな適用除外の仕組みが提案されています。今回の注目ポイントは例でも挙げられている適用除外対象者の健康確保を徹底し、ワークライフバランスを促進するための①労働時間の量的上限規制と②休日・休暇取得促進に向けた強制的取組みの導入でしょう。こうした仕組みは従来、トラックドライバーなど一部の特殊な勤務が想定される者にしかないものでした。この報告にあるように従来の労働時間の仕組みが合わない労働者が増えているのは事実ですので、社員の健康確保を前提として、様々な労働時間制度が出てくることには期待したいところです。
この内容は今後、労働政策審議会などでの議論を経て、更に具体化されていくことになると思われます。今後の動向には注目していきましょう。
参考リンク
内閣府「第22回規制改革会議」
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/committee2/131205/agenda.html
(大津章敬)
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