中国人事管理の先を読む!第73回「一人っ子政策の緩和?」
三中全会(中国共産党第十八回中央委員会第三回全体会議)が11月12日に閉幕しました。今回の会議では、「一人っ子政策の緩和」「定年年齢引き上げの検討」などが大きな政策方針として出されました。
中国の人口は2013年時点で13億5400万人。世界第2位のインドが12億4150万人です。中国では1979年から始まった「生育計画」や「生育条例」によって一人っ子政策が進められてきました。インドでは中国よりも早く、1952年から出産抑制政策が提案されていましたが、70年代にインディラ・ガンジー首相が出産抑制政策を強行し、国民の反感を買い、選挙で敗退。結局インドでは出産抑制は実現しませんでした。一方の中国では、生育計画の効果により出生率は1963年に4.4%あったのが、2011年には1.2%までに減少。人口増加率も中国は0.48%と、インドの1.43%を大きく下回っています。このためインドは2025年に人口が13億に達し、2030年には中国の人口を上回ると言われています。
このように一人っ子政策の結果、人口増加を抑制してきた中国ではありますが、既に人口の10%が60歳以上の高齢者で、2030年には4分の1にまで高齢化が進むとみられています。極度の少子高齢化により労働人口が減少していること、年金などの社会保障政策が発展していないため社会不安が拡大していること、男子への期待が大きい農村部などで女性や子どもの人権が軽視され、欧米先進国からの一人っ子政策の解除を求める外圧が高まっていること、さらにマクロ経済の側面からみれば内需が次第に縮小していくことなど、多方面にわたって社会問題を包含してきているため、生育計画の緩和については政策上、十分に考えられるところではあります。
ただ政府としては、一般にリリースされているほど急激な緩和には着手しないでしょう。むしろここで分析しておくべきは、法定定年齢の引き上げとこの一人っ子政策の緩和とがセットになっているということです。年金支給の問題、つまり社会保障の問題は中国の内政上、看過できないところまで来ています。定年引き上げは全人代でも過去議論され、方針が見送られた苦い経緯があります。今回改めて年金受給年齢を引き上げることによる国民からの反発を避ける意味で、トレードオフとなる一人っ子政策の緩和をカードとして切ったとみるべきなのかも知れません。
参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
http://bizpresso.net/about
(清原学)
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