中国人事管理の先を読む!第75回「ベースアップの方法」

baseup 年が明けてから、日本の労使関係は早くも春闘の様相を呈し始めています。日本経済は円安と株高によって企業の内部留保が高まり、物価も少しずつ上昇しながら、さらに長年の企業努力もあって景気は少しずつ回復傾向を見せています。長かったデフレからインフレ基調に一気に変った影響により、今年は久々にベースアップの声も聞こえ始めてきています。ところが、日本企業がベアを廃止し始めたのが90年代に入ってからですから、この20年間はベアという賃金管理を実施していなかった企業も少なくなく、企業の人事部や管理職の方たちは、「いったいベアってどうやってやるのか?」という戸惑いも隠せないようです。

 私が90年に入ってから学んできた職能資格制度による賃金管理の方法には、もちろんこのベアのやり方も含まれており、ずいぶんとベアについては教えられてきました。一方中国ではここ10年間、毎年の消費者物価は上昇しており、ベアの実施は不可欠なのですが、日本でもベアを経験したことがない方にとっては、中国の賃金管理は一層難しそうに映ることかと思います。

 ベア(Base-up)とは、企業の賃金水準全体の底上げを意味しています。ここに物価の上昇分を加えなければ、賃金水準は実質上目減りをしていくことになりますから、物価上昇分は賃金水準に織り込もうというのがベアの趣旨になります。現在中国全国の平均的な物価上昇は3%を割る程度ですので、この3%の上昇分を賃金水準に反映させることになります。ここで重要なことは、ベアを行う場合、企業がきちんと賃金管理ができる賃金テーブルを持っているという前提のもとに行われるかです。

 ベアには「定額ベア」と「定率ベア」の2通りがあります。「定額ベア」は現在の賃金テーブルに対し一律の金額を上乗せするもの、一方の「定率ベア」は同じく賃金テーブルに同率をかけて賃金の上昇を目論むものということになります。定率ベアの場合は単純に物価上昇の3%を全賃金に対し乗じ、底上げを行うことになりますが、そもそもの賃金が高い(=高位の従業員)ほど上昇の絶対金額は大きくなります。従って一般的に「定額ベア」は下に厚く、「定率ベア」は上に厚いという呼び方がされるのです。通常、上位階層の従業員になればなるほど物価上昇という外的要因よりも、成果という属人的要素によって賃上げが行われるため、定額でベアを行う例の方が多くなるわけです。


参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
http://bizpresso.net/about

(清原学)
http://blog.livedoor.jp/kiyoharamanabu/

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