[医療福祉労務管理連載(8)]医療福祉機関における有期契約職員のより良い雇用管理に向けて(1)

看護 これまで当ブログの医療福祉労務管理連載では、有期雇用契約が抱える問題点や契約締結時の注意点、労働契約法の改正内容等について解説をしてきました。連載の最後は、実際に医療機関・福祉施設の現場で有期契約職員を採用し、職員が活躍できる環境を整えていくためには、事業所としてどのような点を注意すべきかを2回に分けて解説します。今回は、有期契約職員の雇用を行う場合に、事業所としてあらかじめ検討しておくべきことを中心にお伝えします。
採用開始前に労働条件内容を十分検討する
 有期契約職員の雇用を行う場合は、契約期間や更新基準について十分に検討した上で採用活動を始めることが肝心です。実際に雇用を開始し契約更新を繰り返した後に、今後雇用を継続するかどうかについて考えるのではなく、更新上限や無期雇用への転換予定の有無について方向性を定めておきましょう。事業所としての方針がはっきりしていれば、面接時に応募者から無期雇用転換について質問があった場合でも、明確に回答することができ、後々のトラブルを回避することにつながります。また、採用時には労働条件や労働契約の内容について、職員の理解が深まるよう説明するとともに、労働契約の内容について契約書を締結しておくことを怠らないようにしましょう。

面談の場や相談窓口を設ける
 医療機関・福祉機関では多くの場合、採用後は実際の現場で仕事を覚えていくこととなります。業務について分からないことは、上司や先輩職員に尋ねることができますが、処遇の内容等については聞きにくかったり、誰に聞いたらよいか分からなかったりすることが起こりがちです。事業主や人事担当者としても、採用後は業務の多忙さにより、新入職員のフォローが手薄になる場合があります。こうしたときに、仕事内容や処遇について職員の声を聞くきっかけを設けることで、職員が安心感を持って働けるようになります。特に、職員の個別面談の機会を設けることは、個々の職員の疑問や悩みを解消するとともに、意欲的に仕事に取り組み、能力を高めるきっかけとなる場合もあるため、実施が望まれる事項の一つと言えます。なお、平成27年4月1日より施行させることが決定した改正パートタイム労働法では、パートタイム労働者からの相談に対応するための体制整備が義務付けられており、具体的な相談担当者を決めた上で、相談対応を行うことが必要となります。

雇止めありきではなく、無期雇用転換を検討する
 有期雇用契約は一定の条件の下、期間満了に伴う雇止めが認められるため、契約期限が到達した場合に更新を行わず、別の新たな職員を採用していくことは可能です。特に労働契約法の改正により無期転換ルールが定められてからは、雇用を継続しなければならない状況になることを避けるため、無期転換の申込ができる時期になる前に一律に雇止めをしようとする傾向も見られます。しかしながら、多くの有期契約職員は、雇止めの可能性があるということを認識しながらも、契約の更新や無期雇用への転換がされ、継続して働けることを期待して仕事をしていると考えられます。事業主としても、同じ職場に所属した職員を期間が到来したからと一律に雇止めを行うことにはためらいを持つのが本意でしょう。時間や費用を投じて育成してきた職員が短期間で退職してしまうよりは、長く働き続けてもらう方が費用対効果だけでなく、職場としての知識、技能の継承の観点からも有効と考えられます。

 以上のことから、事業主としては長く働きたいという職員の思いに応えるとともに、職場における人材やノウハウの継続的な活用を図るためには、一律に雇止めを行うのではなく、無期雇用転換の制度整備を行うことも有効な方法と考えられます。この場合、適切な評価の下で人材の見極めをしっかり行い、計画的な人員管理を進めることが重要となってきます。

(小堀賢司

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