製造現場での派遣労働者の労災事故率は全労働者の1.7倍

派遣労働者の労災 臨時国会は、先月の21日に衆議院解散という形で終わりましたが、今日はこの国会で提出された「質問主意書・答弁書」の一部にの内容について、取り上げておきましょう。質問主意書とは、国会議員が内閣に対し質問する文書であり、それに対し内閣が回答となる答弁書を発行しますが、今臨時国会では、「派遣労働者の労働災害等に関する質問主意書」というものが提出されました。

 この質問主意書では、廃案とはなったものの改正労働者派遣法案が提出されたことなどに伴い、派遣労働者の労働災害の実態とその防止策について、質問を投げかけています。その中では、「製造業の現場において、派遣労働者の事故(労働災害)率と全労働者の事故率は、それぞれいくらか」というものがあり、答弁としては、「事業主から所轄労働基準監督署長に提出された労働者死傷病報告及び総務省の「労働力調査」によると、平成25年の製造業における労働者1,000人当たりの一年間の休業4日以上の死傷者数(以下「年1,000人率」という)は、派遣労働者が4.8人、全労働者が2.8人である」としています。

 つまり、製造業における派遣労働者の事故は、全労働者の1.7倍にも達していることが分かります。この理由について、答弁では「派遣労働者の年1,000人率が全労働者の年1,000人率より高い要因としては、一般的に派遣労働者は、業務の経験年数が短いことや派遣労働者の安全衛生教育の受講率が低いことが考えられる」と分析しており、実際に、平成21年3月31日に通達「派遣労働者に係る労働条件及び安全衛生の確保について」を発出し、また「製造業における派遣労働者に係る安全衛生管理マニュアル」を作成し、その普及を含めて派遣元事業主及び派遣先事業主に対して指導を行っていることを伝えています。

 実態としては、通達の発出やマニュアルの作成・周知では、派遣労働者の労働災害の効果的な防止にまでは至っていないようであり、「今後、製造業における派遣労働者の安全の確保に向けた更なる周知の方法について検討してまいりたい」と答弁していることから考えると、今後、安全衛生教育という面から派遣元・派遣先、両事業所について、指導が強化されるかもしれません。 答弁書にある「製造業における派遣労働者に係る安全衛生管理マニュアル」は以下からダウンロードできますので、再度、確認・教育を徹底することが求められます。
「製造業における派遣労働者に係る安全衛生管理マニュアル(平成21年10月)」のダウンロードはこちら
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/091130-1.html


参考リンク
衆議院「派遣労働者の労働災害等に関する質問主意書」
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a187068.htm
厚生労働省「製造業における派遣労働者に係る安全衛生管理マニュアル(平成21年10月)」
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/091130-1.html

(宮武貴美)
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