不正受給対策で見直しが検討される傷病手当金と出産手当金

不正受給対策で見直しが検討される傷病手当金と出産手当金 来年度の健康保険料率については、2015年2月8日のブログ記事「東京・愛知の来年度の健康保険料率は平成26年度を維持の見通し」等で、取り上げましたが、これ以外にも、この先、医療保険制度に関して見直しが検討されている事項があります。今日は、その中でも傷病手当金および出産手当金の支給額に関するものについて取り上げましょう。

 傷病手当金は、病気(私傷病)で休業する際に、被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度です。そのため、被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に1日につき被保険者の標準報酬日額の3分の2に相当する額(1円未満四捨五入)が支給されることになっています。この支給額については、傷病等で休業する際の標準報酬月額により決定されますが、休業直前に労使双方で合意して、賃金を引上げるなどの方法により、一時的に標準報酬月額も引上げて、傷病手当金として支給される額を多くするといった実態が一部であるようです。

 このような不正受給とも言える状況を防止する等の観点から、給付の基礎となる標準報酬の算定を対象被保険者の被保険者期間のうち、直近1年間の標準報酬日額の平均(被保険者期間が1年間に満たない被保険者は、被保険者期間における標準報酬日額の平均か、その保険者の全被保険者の平均標準報酬日額のいずれか低い額)とするよう見直すことが検討されています。その時期は、平成28年度から予定されています。

 なお、被保険者が出産のため会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合に支給される出産手当金についても、傷病手当金と同様の支給額決定方法が用いられているため、こちらについてもあわせて見直しが検討されています。

 受給する被保険者にとっては、支給額が大きく変わる可能性もあるため、今後の検討状況をしっかり確認していきましょう。


関連blog記事
2015年2月8日「東京・愛知の来年度の健康保険料率は平成26年度を維持の見通し」
https://roumu.com
/archives/52064530.html

2015年2月4日「協会けんぽの来年度の保険料率は1ヶ月遅れの4月分(5月納付分)から変更の見通し」
https://roumu.com
/archives/52063674.html

参考リンク
協会けんぽ「第63回全国健康保険協会運営委員会 資料」
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/home/g7/cat720/h26/dai63kai/270130002

(宮武貴美)

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