自動車運転者を使用する事業場の82.1%が労働基準関係法令違反
労働基準監督署などの労働基準監督機関は、労働基準法をはじめ労働関係法令に違反していないか監督指導を行っています。本日はこうした調査指導の結果として、厚生労働省が発表した「自動車運転者を使用する事業場に対する平成25年の監督指導、送検の状況」の結果を取り上げましょう。
その結果によると、平成25年に監督指導を実施した4,279事業場のうち、3,513事業場(82.1%)が労働基準関係法令に違反しており、また、2,510事業場(58.7%)では改善基準告示違反が認められるという結果となりました。主な違反内容は、上位から順に以下のとおりとなっています。
労働時間 56.6%
割増賃金 24.5%
休日 4.7%
違反内容の第1位となった労働時間については、慢性的な労働力不足であることに加え、改善基準告示で定められている拘束時間や休息時間など自動車運転者特有の管理があり、他業種よりも非常に細々とした管理が求められていることが要因の一つと考えられます。また、第2位となっている割増賃金の支払いについては、業績給の支払いが割増賃金の支払いにあたらないとされた「田口運送事件(平26.4.24横浜地裁相模原支部判決)」をはじめ、近年では、割増賃金と通常の労働時間分の賃金との区分が明確にされていないことを理由とし、割増賃金の支払いが否定されるケースも出てきています。そのため、割増賃金の支払い方に関しては、裁判例の動向を注視しながら、見直しを行っていくことが求められます。
自動車運転者は、依然として長時間労働の実態にあり、脳・心臓疾患の労災認定件数がもっとも多い職種でもあります。また、他の業種と比べても違反率が高いことから、厚生労働省では、引き続き、自動車運転者を使用する事業場に対し、労働基準関係法令などの周知・啓発に努めることを宣言しています。国土交通省とも連携を取り相互通報も行っていますので、自動車運転者を使用する事業場においては、特に労働時間や割増賃金の支払いを重要な課題と捉え、法令遵守に取り組んでいくことが必要です。
[運送業の労働時間制度と監督署調査対応に関するセミナーを開催します]
以上のように運送業において労務管理上の問題が多いことから、以下のセミナーを開催することとなりました。非常に特殊性が強く、難易度の高い業種ですが、3時間で一通りの知識を習得できるカリキュラムになっておりますので、ぜひご参加ください。
元労働基準監督署長 村木宏吉氏による
運送業の労働時間制度と労基署調査のポイントを3時間で徹底的にマスターする講座
講師:町田安全衛生リサーチ 代表 村木宏吉氏(元労働基準監督署長)
開催会場および日時
(1)東京会場 2015年4月8日(水) 13:30~16:30
名南経営コンサルティング東京支店 セミナールーム(日比谷)
(2)大阪会場 2015年4月9日(木) 13:30~16:30
エル・おおさか 709会議室(天満橋)
詳細およびお申し込みは以下よりお願いします。
http://www.lcgjapan.com/seminar/201504unso/
参考リンク
厚生労働省「自動車運転者を使用する事業場に対する平成25年の監督指導、送検の状況を公表します」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000066846.html
厚生労働省「自動車運転者の労働時間等の改善の基準」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/roudoujouken05/index.html
(佐藤和之)
当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。
最新情報の速報は「労務ドットコムfacebookページ」にて提供しています。いますぐ「いいね!」」をクリック。
http://www.facebook.com/roumu
当ブログの記事の無断転載を固く禁じます。