首相官邸がまとめた「一億総活躍社会対策」の中で見られる人事労務環境整備の内容

一億総活躍社会対策 先週、内閣官房内に設置されている一億総活躍国民会議は「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策-成長と分配の好循環の形成に向けて-」を取りまとめ、公表しました。この中にはいくつか人事労務環境整備に関わる内容が見られますので、本日はその箇所を見ておくことにしましょう。
最低賃金・賃金引上げを通じた消費の喚起
○名目GDPを2020年頃に向けて600兆円に増加させていく中で、最低賃金について、年率3%程度を目途として、名目GDPの成長率にも配慮しつつ引き上げていく。これにより、全国加重平均が1,000円となることを目指す。このような最低賃金の引上げに向けて、中小企業・小規模事業者の生産性向上等のための支援や、取引条件の改善等を図る。
○賃上げについて、未来投資に向けた官民対話において、産業界から「来年についても賃金の引き上げに向けた努力と取引価格の適正化などへの取組みを明記した昨年の政労使会議の取りまとめに則り、名目3%成長への道筋も視野に置きながら、収益が拡大した企業に対し、今年を上回る賃金引き上げを期待して、前向きな検討を呼びかけていく」との表明があったところ、政府として、そのための環境整備とともに過去最大の企業収益を踏まえた賃上げに向け働きかけを行う。
女性・若者・高齢者・障害者等の活躍促進
○就労促進の観点から、いわゆる103万円、130万円の壁の原因となっている税・社会保険、配偶者手当の制度の在り方に関し、国民の間の公平性等を踏まえた対応方針を検討する。
○長時間労働の是正や公共調達の活用等により、ワーク・ライフ・バランスの実現を加速する。
○障害者等の就労支援体制を拡充する。
○企業の採用基準等や学校の入学者資格が、障害や難病のある方が一律排除されているかのような表現になっていないか総点検を呼びかけ、改善を促す。
結婚・子育ての希望実現の基盤となる若者の雇用安定・待遇改善
○不安定な雇用と低所得のために結婚に踏み切れない若者の希望を実現するため、既卒者・中退者の雇用機会の確保などを通じ若者の円滑な就職を支援するとともに、非正規雇用労働者の正社員転換・待遇改善を推進する。
○非正規雇用労働者が育児休業を取得し、継続就業しやすくするための制度見直しを検討する。
○妊娠・出産・育児休業等を理由とする不利益取扱い等を防止するため、法制度を含めて対応を検討する。
○自営業者・短時間労働者等の産前産後期間の経済的負担を軽減するため、国民年金の保険料の免除等の検討を行う。
○中小企業に被用者保険の適用拡大の途を開く制度的措置を講ずる。
介護に取り組む家族が介護休業・介護休暇を取得しやすい職場環境の整備
○介護休業を利用しやすくするため、対象家族1人につき93日取得することが可能な休業を、分割取得できるよう制度の見直しを検討する。また、介護休暇について、より柔軟な取得が可能となるよう検討する。
○介護休業の前後で所得を安定させるため、介護休業給付の給付水準(40%)について、育児休業給付の水準(67%)を念頭に引上げを検討する。

 最低賃金引き上げ、ベースアップ、過重労働対策、育児介護休業の拡充、マタハラ対策などがテーマとして上げられています。今後、こうした方向性で法改正等の議論が行われますので、その風向きを理解し、実務面の対応も進めておきましょう。


参考リンク
一億総活躍国民会議「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策 平成27年11月26日」
http://www.kantei.go.jp/jp/topics/2015/ichiokusoukatsuyaku/kinkyujisshitaisaku.pdf
首相官邸「一億総活躍社会の実現」
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/ichiokusoukatsuyaku/

(大津章敬)

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