違法な厚生年金未加入事業所に対する現状の指導状況

調査 厚生年金の未加入者が推計で200万人存在すると年初に大きく報道されました。未加入者の多さに注目が集まり、今後、未加入事業所に対する適用の強化が行なわれることが想定されています。これに関連し、今国会で「厚生年金違法未加入の調査結果に関する質問主意書」が提出され、それに対する答弁が行なわれていますので、本日はこの内容についてみておきましょう。

 質問の内容は10に分かれていますが、その中で特に確認しておきたいものとして、違法に未加入を続けている事業所に対する加入指導があります。質問では、以下の3点を指摘しています。
日本年金機構が、違法に厚生年金への加入をさせていない疑いのある事業所に立ち入り検査をすると予告しながら、その6割に対して予告して3か月経過しても立ち入り検査をしていないという実態がある。この内容を詳しくお示し願いたい。
予告して2年以上立ち入り検査をしなかった件数と、その理由をお示し願いたい。
厚生年金への加入を3回以上指導したにもかかわらず応じない事業所に対し、1年以上、立ち入り検査の予告すらしなかったケースは何件あるのか、その理由とともにお示し願いたい。

 これに対し、以下の内容の答弁を行なっています。前提としては、厚生年金の適用事業所となった後に、被保険者資格の取得及び喪失の届出、毎月の保険料納付等、事業主の義務を的確に履行させる必要があり、事業主の理解を求めながら、可能な限り自主的な加入手続をするよう指導していることがあります。
指導等の流れとその結果
 可能な限り自主的な加入手続きをするように指導する
       ↓
 加入指導に応じない場合には、立入検査予告
     →立入検査予告により、約4割が自主的加入(平成26年度実績)
       ↓
 2年以内に全件の立入検査を行なう(平成26年度実績)
3回以上の加入指導後の立入検査予告実績と予告しなかった理由
・1年以上、立入検査予告を行わなかった件数は、187年金事務所で3,975事業所
・立入検査予告を行わなかった理由は、勧奨により事業主から自主届出の可能性があると判断したこと等

 今回、問題が大きな注目を浴びたことから、今後、加入指導が強化されることは必至だと思われます。


参考リンク
衆議院「第190回国会 6 厚生年金違法未加入の調査結果に関する質問主意書」
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/190006.htm

(宮武貴美)

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【参考:答弁の該当部分】
 厚生年金保険を適用すべき事業所に対する厚生年金保険の適用に当たっては、適用事業所となった後においても、被保険者資格の取得及び喪失の届出、毎月の保険料納付等、事業主の義務を的確に履行させる必要があり、日本年金機構においては、事業主の理解を求めながら、可能な限り自主的な加入手続をするよう指導しているところである。

 また、立入検査予告とは、加入指導に応じず、届出義務を果たさない事業主に対して、日本年金機構が権限により立入検査を行い、職権により適用することがあることを事前に通告するものであり、加入指導では面談することができなかった事業主と面談が初めて可能となる等の効果もあり、立入検査の実施の前に自主的な加入手続につながる最終的な届出指導として行ってきたものである。なお、会計検査院が平成二十七年に取りまとめた平成二十六年度決算検査報告(以下「平成二十六年度決算検査報告」という。)の結果においては、立入検査予告が行われた事業所のうち立入検査予告が行われたことにより自主的な加入に至った事業所の割合は約四割となっている。

 御指摘の立入検査予告をしてから三か月以内に立入検査を行っていない理由については、加入指導では事業主と面談ができず、また、立入検査予告によってもなお、事業主と面談ができていない状況等により、立入検査の実施ができなかったため等である。
 また、お尋ねの立入検査予告を行った後二年以上経過しても立入検査を実施していなかった件数については、平成二十六年度決算検査報告において、立入検査予告が行われても自主的な加入に至らなかった千百十七事業所について、そのような事案はない。

 お尋ねの厚生年金保険への加入を三回以上指導したにもかかわらず加入に応じない事業所に対し、一年以上、立入検査予告を行わなかった件数は、平成二十六年度決算検査報告において検査対象となった百八十七年金事務所について、三千九百七十五事業所であり、また、立入検査予告を行わなかった理由は、勧奨により事業主から自主届出の可能性があると判断したこと等である。未適用事業所に対して立入検査を実施する際には、日本年金機構が定めた立入検査実施手順に基づき、事業実態が確認できた場合に立入検査を実施することとしているが、事業所の個々の実情に応じ柔軟に対応するため画一的な期限は設けていなかったものであり、日本年金機構において担当職員に対する処分等を行う考えはないものと承知している。

 今後の改善策については、政府としては、日本年金機構において、効果的、効率的な適用促進業務全体の在り方を検討するよう指導してまいりたい。