[注目通達]労働時間の把握に「IC定期券等」の利用も
一昨年の11月に過労死等防止対策推進法が成立し、長時間労働、過重労働およびこれによる健康障害の発生の問題がさらに注目を浴びるようになっています。特にここ最近は、人材不足が続いており、不足分を時間外労働で補わざるを得ない状況もあるのではないでしょうか。
さて、このような中、厚生労働省大臣官房審議官(労災・賃金担当)から、都道府県労働局長宛に 平成28年2月12日 労災発0212第1号「労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項について」という通達が発出されました。通達の内容は、過労死等の労災事案に対する適切な運営等を指示、来年度の新規相談員の体制等を通知したものですが、その中に労働時間の把握で注目しておくべき内容が含まれています。
これまでも労災の認定において、労働時間が把握できないことがあり、勤務するビルの入退館の記録等が参考にされることがありましたが、通達では以下のように「IC定期券等の乗車記録の確認を行う」ことが例示としてあげられています。
過労死等事案においては、実労働時間の把握が重要であることから、タイムカード等の実労働時間と直結する資料が得られない場合については、同僚、取引先や家族からの聴取に加えて、監督担当部署と協議しつつ、事業場建物への入退館記録、パソコンによる作業履歴等の分析、IC定期券等の乗車記録の確認を行う等、労働時間の迅速・適正な把握を行うこと。
また、行政事件訴訟において、事業場の始業時刻より相当程度早い時刻に出勤している事実が認められるにもかかわらず、その時間帯における就労状況について関係者への確認を十分に行わず、一律に始業時刻以降を労働時間としていたもの、運送業務に従事する労働者の運送先から事業場までの帰路の時間を労働時間に算入していなかったもの、などの労働時間の把握が不十分な事案がみられたことから、就労状況について調査を尽くした上で、実態として労働していることが認められた場合には、労働時間として的確に反映させるなど、労働時間の適正な把握に努めること。
そもそもの労働時間管理の他、会社が把握している時間と、実際の労働時間に乖離がないか等、今後、労働時間管理はこれまで以上に重要になっていきます。
参考リンク
法令等データベース「労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項について」
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T160303K0060.pdf
(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/
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