健康保険で給付を受けていた傷病が労災として認められた場合の調整の取扱いが変更に
現在の社会保険制度では、業務上で災害があり、医療機関等で治療を受けた場合等は労災保険を、私傷病で医療機関等で治療を受けた場合等には健康保険を利用することになっています。医療機関等で診療を受ける際には、あらかじめどの保険から給付を受けるかを確認されるのですが、業務上の災害であるにも関わらず、健康保険から給付を受けているようなことがこれまでもよく発生していました。
そうした場合、健康保険から労災保険に切り替えるため、一旦、被保険者が労災保険から受ける給付分について、全額、費用の立替(健康保険として給付を受けていた自己負担3割を除く7割分を健康保険に返還)を行い、改めて労災保険から給付(自己負担3割+返還した7割分)を受けるという仕組みになっていました。
この仕組みの場合、一旦、立替が発生するため、被保険者の負担が大きくなっていましたが、先日、通達「労災認定された傷病等に対して労災保険以外から給付等を受けていた場合における保険者等との調整について」(平成29年2月1日基補発0201第1号)が発出され、被保険者が立て替えることなく、労災保険と健康保険の間で調整されるようになったことが示されました。
その大まかな流れとしては、被災労働者等の労災の認定をした労働基準監督署へ被保険者が申し出等をすることにより、「療養(補償)給付たる療養の費用請求書(様式第7号)」の支払先として、健康保険の保険者の口座を指定することができるようになります。健康保険の保険者が支払先とされた場合には、レセプトの確認等が行われ、労働基準監督署と健康保険の保険者の間で、金額が確定、被災労働者に自己負担額が返還され、また、労災保険と健康保険の間で調整がされるというものです。
※通勤災害に対する給付も同様です。
この仕組みを利用するには、同意書や委任状の提出が必要になってくるため、手続きが若干煩雑になるかと思いますが、被保険者の負担軽減は大きなものがありますので、該当する事案が発生した際には、積極的に利用したいものです。
参考リンク
法令等データベース「労災認定された傷病等に対して労災保険以外から給付等を受けていた場合における保険者等との調整について」
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T170203K0010.pdf
(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/
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