労働時間の上限規制 中小企業で懸念される業績への悪影響
政府主導の働き方改革実現会議において、時間外労働の上限規制の導入準備が進められるなど、労働時間に関する関心が高まっていますが、株式会社東京商工リサーチでは2017年2月に行った「長時間労働」に関するアンケート調査の結果を公表しました。全国約12,500社に対して行われた本アンケート調査では、残業の有無について、「残業がある」と回答した企業が全体の93.8%にのぼり、企業規模を問わず、ほとんどの企業で残業が行われていることが分かりました。
その残業発生の原因として挙げられたのは、大企業では「仕事量に対して人手が不足している(30.0%)」がトップであるのに対し、中小企業では「取引先への納期や発注量に対応するため(40.6%)」がトップとなっています。大企業では自社の努力により生産性の向上、人員の補充が行われれば、残業は抑制されていくことが推測されますが、それに対して、中小企業の場合は、仕事の下請けを行うことが多く、取引先の協力がなければ、残業発生のメカニズムは解消されないであろう実態が浮き彫りとなっています。
また、現在検討されている時間外労働の上限規制が導入された場合の影響については、企業規模を問わずトップに挙げられたのは「仕事の積み残しが発生する(28.9%)」でしたが、大企業が「従業員のモチベーション向上・心身健全化(13.3%)」と上限規制の導入をポジティブに捉えた回答も上位に挙げられていることに対して、中小企業では「受注量(売上高)の減少(17.6%)」や「従業員の賃金低下(15.1%)」が上位に入るなど、受注・賃金の減少などの悪影響を強く懸念している結果となっています。
長時間残業を前提とした仕事の進め方を前提とする限り、時間外労働の上限規制は、企業業績への悪影響を引き起こす可能性があります。他社に先んじた仕事の改革、生産性向上が、この厳しい時代を勝ち残るポイントになっていくことでしょう。
関連blog記事
2017年3月18日「注目の「時間外労働の上限規制等に関する政労使提案」が公表に」
https://roumu.com
/archives/52125772.html
参考リンク
東京商工リサーチ「「長時間労働」に関するアンケート調査」
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20170310_01.html
(佐藤和之)
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