労働政策審議会で明示された同一労働同一賃金の論点案

同同 働き方改革では、同一労働同一賃金と過重労働対策が二大テーマとなっていますが、ゴールデンウィークが明けたことから、その本格的な議論が開始されています。このうち、同一労働同一賃金に関しては、2017年5月12日(金)に厚生労働省で第2回労働政策審議会労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会が開催され、その論点案が示されています。この中でもっとも注目される「労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備」という論点について取り上げることとしましょう。

 この点については、2017年3月28日の働き方改革実現会議で決定された働き方改革実行計画の中では、以下のような方針が示されています。


 現行制度では、均等待遇の規定は、有期雇用労働者については規制がない。また、派遣労働者については、均等待遇だけでなく、均衡待遇についても規制がない。この状況を改めるため、有期雇用労働者について、均等待遇を求める法改正を行う。また、派遣労働者について、均等待遇及び均衡待遇を求める法改正を行う。さらに、パートタイム労働者も含めて、均衡待遇の規定について、明確化を図る。


 この論点については、以下のような検討事項があげられています。
均等待遇規定((1)職務内容と、(2)職務内容・配置の変更範囲が同一である場合の差別的取扱いを禁止)について、有期契約労働者についても対象としてはどうか。
均衡待遇規定((1)職務内容、(2)職務内容・配置の変更範囲、(3)その他の事情を考慮して不合理な待遇差を禁止)について明確化を図るため、待遇差が不合理と認められるか否かの判断は、個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に対応する考慮要素で判断されるべき旨を明確化してはどうか。
また、現行のパートタイム労働法(第10条)においても、「職務の成果」「能力」「経験」といった要素については、賃金決定に際し勘案を求めている要素でもあることから、「その他の事情」の範囲が狭く解されることのないよう留意しつつ、「その他の事情」の中から新たに例示として明記してはどうか。
比較対象となる者について、現行は、パートタイム労働法では同一の事業所に雇用される「通常の労働者」とし、労働契約法では同一の使用者に雇用される無期契約労働者としているが、近年は非正規雇用労働者自身が店長などの事業所の長であり、同一の事業所内に正規雇用労働者がいないケースも見られるため、同一の使用者に雇用される正規雇用労働者を比較対象としてはどうか。
こうした短時間労働者・有期契約労働者の均等待遇規定・均衡待遇規定等について、解釈の明確化を図るため、ガイドライン(指針)の策定根拠となる規定を設けてはどうか。

 具体的な議論はこれからですが、同一労働同一賃金の問題は、今後のわが国の人事管理を大きく変える可能性がありますので、その落としどころも含め、今後の議論をしっかり追っておきたいところです。


参考リンク
厚生労働省「第2回労働政策審議会労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000164682.html

(大津章敬)

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